転生は死んでから
初投稿です。
拙い文章ですが、皆様のお目に止まれば幸いです。
(あぁ、体が重い…腹痛い…)
時間が止まったみたいに周りがゆっくりみえる。
やたらとうるさいのに、どこか遠くに感じる。
だけど腹部の激痛がこれが現実だと教えてくれる。
目の前には、料理目的じゃなさそうなごついサバイバルナイフを持った虚ろな瞳をした男が立っている。そのナイフは真っ赤な血で濡れている。
言わなくても気づいてるかもしれないけど、あれ俺の血です。
ナイフ持って暴れてる男に刺されそうな女子校生をかっこつけて庇って刺されちゃいました。
けど、仕方ないとも思うんです。
交差点のど真ん中で突然ナイフ持って暴れだした男が目の前で女子校生を刺そうとしてるんです。
なんか、俺動けたんです。
助けてしまうでしょう?
けど、その結果、逃げなきゃいけないのに、俺を刺した犯人の前で膝をついてしまってる訳です。
周りの人達も突然の出来事に驚いてるみたいです。
こらそこ、スマホカメラは止めなさい。
あ、あとで証拠とかになるのかな?
じゃあ、撮ってよし。
俺の後ろでは助けた女子校生がカタカタと泣きながら震えている。
(そりゃ、こんな状況怖いよな。)
俺だって怖かったけど、咄嗟に体がうごいたんだからしょうがない。
自分でもこんな正義感なんてあるとは思わなかったですよ、30年付き合ってきた自分の意外な一面を知りましたね。
...これが、最後かもしれんけど。
目の前の男はブツブツと「あいつが、あいつが…」とかつぶやいてるし、後ろの女子校生は、震えて動けないし、血は止まらないけど、周囲からようやく「警察よべ!!」とか「救急車!!」って叫んでるからそのうちなんとかなると思います。
とにかく、それまで後ろの女の子は守ってあげたいけど...無理かもしれない。
ただの一般人な俺には激痛にたえながら格好よく守るなんてできそうもないというか、やばい、目が霞んできた…このまま死ぬのかなぁ
あー…これはやばいかな…。
薄れゆく意識の中、男が大声を上げながら、ナイフを振りあげた。
その向こうから駆けつけた警官が叫びながらこっちへ向かってきている。
ギャラリーが息を呑む姿の中に、不自然な笑顔を浮かべた少年を見つけた瞬間・・・
突如地面から目が眩むほどの光が溢れ、視界を真っ白に塗りつぶした。
それが、俺の『人生』で最後の光景だった。