プロローグ『都市伝説のヒーロー』
ヒーローとは一体どういう人間か?
このような質問をした場合、多くの者は「悪を倒す正義」と答えるだろう。
「人類の味方」
「弱い人のために戦い皆を守ってくれる」
「悪い奴を倒す」
「かっこいい。憧れる」
「仲間と一緒に戦ってる」
「優しくて強くて皆を守ってくれる凄い人」
などなどいろんな意見があるだろう。
だが、俺が出会ったのはそんなわかりきった、わかりやすい男ではなかった。
赤いマフラーとブーツを身に纏い人々を襲う怪人を倒している若い男。
彼こそが最近巷を賑やかす怪人を倒すヒーロー…と言えるかどうか微妙。
というのも、彼は強すぎる。
強すぎて、あまりにも常軌を逸脱しすぎた強さで、都市伝説扱いされているのが現状。
その強さは、ゴリラのような怪物をキック一発で伸してる…というより地面に沈めたりサッカーボールのように蹴り飛ばすことを何でもないことのようにしている…とでも言えば通じるだろうか?
とにかく滅茶苦茶なのだ。
見た目は普通の人間サイズなのに巨大なゴリラのような怪物を蹴り一発で何事もなく倒せるほどに強い。
それ故に彼の存在は都市伝説扱いなのだ。
見た通り話しても見たことある者以外は信じることができやしない。
ついた異名は「人類最強」という漫画の世界などでよく聞くようなもの。
ありきたりというかもしれないが、そうとしか言いようがないのだから仕方がない。
むしろ彼を人類と称していいかすらも危ういのだから。
さて、なぜ俺がここまでその人類最強についてベラベラ語れるかというとそれには二つの訳がある。
その一つは俺がフリーの記者で、特ダネ求めてその都市伝説を調べていたから。
もう一つは…むしろこちらが理由だ。
「ただいま」
寂れた住宅街にある少しばかり大きな屋敷の扉を開けて、同居人に挨拶すればソファで寝っ転がっていた彼から「おかえり」と気だるげに返された。
彼の名前はセン。
なんでも屋の看板を掲げ、その名に恥じず報酬をくれれば犬の散歩も引越しの手伝いも探し物もしてくれる。
そして、彼こそが先ほど述べていた「人類最強」の通りすがりのヒーローそのものである。
…さっき同居人と述べたが、正確に言えば彼はこの家の家主で俺は居候…いや家賃は払っているから正確には家主と店子か。
家事もしているのだから居候では決してない。うん、決して居候ではない。
先ほどスーパーで買ってきた食材を冷蔵庫に入れながらそう断じる。
俺が家事をしている理由というのは、センという男にある。
彼は先ほど述べたように怪人が現れれば襲われてる人を助け怪人を退治し、なんでも屋として頼まれれば犬の散歩も話し相手にもなる。
つまり仕事はできる。
だが、生活能力が全くなかった。
全くないというのは語弊があるかもしれない。
どちらかと言えばやる気がない。
収入源は謎だがそれなりの資産を持っているようで日々コンビニ弁当やジャンクフードやコインランドリーで生きていた彼の生活ぶりに彼の家に同居する以上見かねてできる範囲で俺が家事をするようになったのだ。
俺がこうして取材対象とも言えるセンと同居するようになったのはある一件からだ。
話は半年前に遡る―