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星花女子プロジェクト番外編・短編

あたらしいであい。

作者: しっちぃ

 放課後の、長い長い時間。雨でも降ってないときは、中庭に行くのが、わたしの今のささやか趣味。小学校の校庭だと、中庭なんてなかったし、生き物がいるとしたって校庭の花壇くらい。新しく入った星花女子学園は、その何倍も大きいし、たまに、猫を見かけられるのが特に好き。わたしが、こんな風になった理由で、……いつだって、不思議に魅了されてしまう。

 そんなことを思い返していたら、ちょうど猫が通りかかる。この前も見た、茶トラの仔猫。赤い首輪についた小さな鈴が、一歩進むごとにリンと鳴る。ちょうどぽかぽかした季節だから、おひるねする場所でも探してるのかな。


「ねえ、こっちおいで」


 軽く手を叩いて、小声で呼ぶ。ぷいとそっぽを向かれる。飼われてるから、人にも慣れてると思ったのにな。

 そういえば、この前、煮干しを持ってきてる人がいたんだっけ。私も、持ってこようかな、そうすれば、なついてくれるのかな。ぐるぐる回る考えは、軽い足音に止められる。さっきの猫は、その音から逃げ出すように駆けていく。


「ねこちゃんまってぇ~!はぁ、また行っちゃった……」


 猫を追っかけてた人は、私の目の前で足を止めて息を整える。大きく揺れた三つ編みの髪にふんわりとした雰囲気と幼げな甘い声。私と同い年くらいかなと思うけれど、校章の色はオレンジ色で、二つも上の先輩ってことになっている。

 わたしに気づいた先輩が軽く会釈する。ほっこりする、いままで見せてもらえたことのないような笑顔。悪い人じゃないんだろうなって、考えなくてもわかる。


「ごめんね、びっくりさせちゃったね」

「いいですよ、……でも、そんなに追っかけてたら逃げられちゃうんじゃないですか?」

「そうなんだよねぇ……、どうしたらいいと思う?」

「うーん……じっくり待って、近づいてくるのを待つのがいいんじゃないですか?」


 それを聞いて、知らなかったように目を丸くする先輩の姿は、なんか、わたしのほうが年上みたいに思える。うっかり、敬語を忘れてしまいそうなくらい。


「それで大丈夫なんだー、すごいねぇ」

「先輩みたいな人ならすぐなつくと思いますよ、ふんわりしてますから」

「えぇ!?後輩ちゃんだったの?しっかりしてるから全然思わなかったよぉー」


 まっすぐで、あったかくて、子供っぽいひとだな。もっと、『かんさつ』してみたいな。自然に湧き出た気持ちは、今更抑えられない。


「北川かおりだよ、よろしくね!」

「えっと、椎原樹です、よろしくお願いします」

「そんなに固くならないでいいよ、いつきちゃん、よかったら、連絡先教えてほしいなぁ、猫ちゃんのはなし、もっとしたいし」

「いいですよ、わかりました」


 わたしが言う前に、かおり先輩が全部言っちゃった。それはそれで、都合がいいから、流されたままに連絡先を交換する。

 やっぱり、人って不思議で、もっと知りたくなる。星花女子学園っていう新しい世界は、わたしを夢中にさせるには十分すぎるくらいに未知の世界だ。


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