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この国の制度思った以上にガバガバでした

「以上がこの国の税制度になります」


 王の間でリィンの説明を受けた俺と愛梨はどちらも微妙な顔をしていた。そんな俺たちを見てリィンは慌てだし、


「すいません! すいません!! やっぱり私の説明じゃわかりにくかったですよね!! 出しゃばって本当にすいません!!」


 自分の説明が悪いと思ったらしい、いきなりものすごい勢いで頭を下げだした。


「あ、違うよ!? リィンちゃんの説明は何も悪くないから!!」


 すぐに愛梨がフォローしたが、俺も愛梨に同感である。リィンの説明は決して下手ではない、むしろうまいとさえ言える。問題はそちらではなく、


「税が王の直接視察による裁量ねぇ……」


 端からあの愚王に期待も何もしていなかったがこれほどまで酷いとは思っていなかった。直接視察による王の裁量と言っているが、これはどう考えても好きなだけ税を吊り上げるためのシステム。これでは何の参考にもならない。ただまぁ逆に言ってしまえばどんな方式を取ってもこれよりひどくなることはないと言えるが。


「仕方ねぇ……。考え付くだけやってみるか」


 そう言って俺は部屋に閉じこもることに……、


「そういえば今更だが俺の部屋ってどこだ?」




 三日後、俺は税規定が直に箇条書きで書かれた木の板を王国兵の一人に命じて街の真ん中に立てさせた。つまるところ形式はまんま五箇条の御誓文である。そしてその内容は簡単に言うと以下の通り。


・この国において全ての物品、及びサービスの売買にはは3%の消費税が発生する。


・この国に籍を置く者は年間収入の1パーセントを国に納めなければならない。


・この国の全ての営利団体は年間収入の2パーセントを国に納めなければならない。



 税率の辺りはかなリ適当にやっているがまぁこんなもので平気だろう。仮にかなりの負担があれば税率を下げる方向に傾ければいいだけだし、しばらくはこれでやっていこう。


「ユーイチさんはやっぱりすごいです!!」


 俺が街の反応がどんなものか見ていると、後ろからリィンが目をキラキラさせながらそんなことを言ってきた。


「いや、急にどうした?」


 税制度を施行しただけで凄いと言われる意味が分からない。が、


「だって商売そのものに税金をかけるなんて、そんな発想普通の人にはできませんよ!」


 まぁそりゃ俺も向こうの制度パクっただけだからな。独力で思いついたわけじゃない。が、まぁここは調子に乗らせてもらおう。


「ハハハ!! 俺を崇め奉るがいい!!!」


「ハイ! ユーイチ様!!」


 あ、やめて心が痛い。調子に乗って適当なこと言っただけなのにそこまで慕われると精神的に辛い。しかもなんか様付けになってるし。リィンのような純粋な子をからかうのはやめようと心に誓う俺だった。


「あー……、まぁそんな事よりだ。愛梨が今どこにいるかわかるか?」


 いたたまれなくなってきた俺は何とか話をそらそうとする。まぁ愛梨の居場所を聞いたのは話をそらすためだけではなかったりするのだが。


「あ、アイリさんなら庭の方にいらっしゃいましたが……」


 成る程庭か。俺はリィンに礼を述べ、庭へと向かった。




「ふっ、やぁ!!!!」


 庭に着いた俺が目にしたのは、一人の女子高生が大の大人十数名を相手取ってフルボッコにするという地獄絵図だった。言うまでもなくフルボッコにしているのは愛梨である。


「何やってんのお前?」


 俺が愛梨にそう尋ねると、ようやくこちらに気づいたようで、


「あ、悠一君。なにってただの運動だけど……」


 ちなみに地に伏しているのはこの国の兵士たちである。中には聖騎士たちも混ざっているようだが、例外なく愛梨に軽くボコられていた。力押ししかできない俺とは違い、彼女の戦い方は非常に綺麗である。というかはた目から見ても、ステータス云々の前に技量の時点ですでに愛梨の方が勝っているように見えた。向こうで空手をやっていたと言っていたがどれくらい強かったのかとても気になる。


「どう見ても運動の域を超えてるんだが……。まぁいいや、今から貧民街の方に行くぞ」


 愛梨を連れて行きたかった理由、それは貧民街に行くためだった。貧民街は衛生的に問題がないとはお世辞にも言えず、今のままでは厄介な流行り病が蔓延してしまう。そこで愛梨のヒーラーの能力を活かして未然に防いでしまおうというわけだ。


「いいけどリィンちゃんは呼ばなくていいの?」


 まぁ普通は連れて行くと思うだろうな。だが、


「貧民街に行くのはあくまでも王の視察という体を取ってる以上、俺とお前、そして護衛数名が限度だろうな。そこにリィンを入れるとなると俺が貧民街贔屓だと噂されて反感を買いかねない。そうなると都市部と貧民街の垣根を取っ払うという最終目的が難しくなる」


 今でさえリィンを王城に住まわせるという結構ギリギリなことをやっているのだ。愚王がやっていた貧民街での強制指名制度という完全人権無視の制度が功を奏するとは思っていなかったが、これリィンを特別扱いしてしまうと本当に反抗されかねない。


「ああ、そう言われてみると確かに? うーん、色々面倒だねぇ」


 納得してくれたようだ。正直俺も面倒だとは思うが仕方がない。人をまとめる立場になった経験がないのならば細心の注意を払うべきだ。


「よし、じゃあお前とお前と……、あとお前! 俺たちの護衛として貧民街までついて来い」


『はっ!!!!』


 愛梨にやられた中でも比較的無事な面々を指名し、護衛に任命。任命された兵士たちはプロらしくすぐに立ち上がっていた。さっきまでボコられていたのによく立てるものである。


「まぁいいか。んじゃあ郊外のほうまで行きますか!!」


 そう言って俺たちは貧民街に向けて足を進めるのだった。

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