双葉
「あ、あなたは…?」
「恭子様!?なぜここに?」
唯の問いかけに答えたのは幻弥さんだった。
(あの人が、どうしてここに?)
理由は分からないけれど。
この間も王城に侵入していたのは覚えてる。
(…何か関係があるのか?)
どうして王城にいるのか?
それも二回続けて襲撃中に姿を見せたこと。
その理由を知りたかったんだけど。
「少し嫌な気配を感じたからよ。」
恭子さんは幻夜さんの質問に答えてから堂々と謁見の間を進んできた。
「まあ、それはそれとして…。なぜ貴方達がここにいるのかしら?」
「ふん。貴様に答える義理はない。」
「………。」
武王の言葉なんて気にも留めずに、恭子さんは鋭いまなざしで虎王達を睨みつけている。
「遊びはほどほどにしなさい。」
「ふん。」
恭子さんの警告によって、何故か虎王は剣を収めてくれた。
(…どうして?)
何故、戦闘を中断したのだろうか?
(恭子さんの指示に従ったのか?)
そうとしか思えない状況だった。
明らかな上下関係を感じさせる不穏な空気が感じられるんだ。
(…どうする?)
乱れた呼吸を落ち着かせながら様子を見る。
その間にも恭子さんは虎王達に質問を続けていく。
「どうしてここにいるのかを聞いているのよ。」
「…愚問だな。秘宝を入手するために決まっているだろう?」
「それは不動時雨の意思ですか?」
「いや、我らの意思だ。」
「馬鹿なことを…。例えかつての仲間だとしても彼らに手を出すことは許さないわよ。」
「ほう。我らと敵対するのか?」
「ええ、理に逆らうのなら滅するわ。」
「………。」
恭子さんの言葉をきっかけとして虎王の表情から笑みが消えていく。
と同時に、室内の冷気が更に広がって謁見の間が凍り付き始めた。
「秘宝は我らの計画に影響をもたらす物だ!確実に入手しなければならん。」
「…だから何?式神ごときが私に勝てると思っているの?」
「ふん。やれば分かることだ。」
「どれだけ言っても無駄なようね。」
交渉決裂。
そんな雰囲気が漂い始めたことで恭子さんから殺気が漂い始める。
「だったら仕方がないわ。これが最後の警告よ。双葉の名の下に命じます。今回は大人しく退きなさい。」
「…その言葉の意味が分かっているのだろうな?」
「当然でしょう?」
「…ちっ。いいだろう。そこまで言うのなら引き下がろう。」
(…え?)
襲撃に来たはずの虎王達があっさりと身を引いてくれたんだ。
(どうして?)
意味が分からない。
恭子さんが警告しただけで、
どうして虎王達は秘宝を諦めたのだろうか。
「気に入らないが仕方あるまい。」
「…これも盟約だからな。」
虎王に続いて武王が撤退したことで竜王も姿を消した。
だけど最後まで残った雀王だけは撤退を躊躇っている様子だった。
「負けたわけではない!今回は状況が変わっただけだ。この次に会うときは必ずお前達を殺す!」
香澄様達を睨み付けたあとで雀王も立ち去ってくれたんだけど。
「あらあら、負け惜しみを言うようではまだまだ私達の敵ではないわね。」
堂々と立ちはだかる香澄様は雀王の発言を気にしていない様子だった。
その代わりに、雀王の撤退を見送ってから恭子さんに振り向いたんだ。




