四聖神
「僕も戦います!」
わざわざ不動さんに繋がる手掛かりが来てくれたんだ。
ここで取り逃がすわけにはいかない。
「取り押さえます!!」
「ふっ。いい反応だな。」
僕の後方では唯と渚も動き出しているというのに、
男は動じる様子もないまま僕に問いかけてきた。
「先に言っておくが秘宝を渡すつもりはないか?」
「断る!!」
「…だろうな。ならば奪い取るまでだ。」
男が一気に踏み込む。
そして幻弥さんや杞憂さんを通り越して、一直線に僕に接近してきた。
(…なっ!?速すぎる!)
男の動きは僕の予想を遥かに上回っている。
攻め込んできた男の剣はギリギリで交わすのが精一杯で到底反撃できる隙はなかった。
(…くぅっ!)
「四聖神が一人、虎王。我が牙から逃れられる者なし!」
人の技とは思えないほどの速度で放たれる連続攻撃を受けて徐々に後退してしまう。
(…こ、これが鬼の力なのか!?)
運動速度もそうだけど。
力も圧倒的に人の限界を超えているように感じられる。
(…だけど、どうして鬼がここに?)
不動さんの弟子である彼等はごく普通の人間だったはず。
少なくとも僕の知る限り、鬼として暴れたことは一度もないはずなんだ。
「鬼道四聖神と言ったな!?不動さんの仲間なら答えろ!不動さんの目的は何だ!?あの人はどこにいるんだ!?」
「ふん。答える必要はない。貴様はここで死ぬのだからな。」
(…くっ!?)
虎王の斬激をかわしきれずにわき腹を切られてしまう。
(まずい…っ!)
運良く軽傷で済んだけれど、
傷みのせいで動きが鈍ってしまっている。
この状況で敵の攻撃を回避し続けるのは無理だ。
(逃げられないのなら、前に進むしかない!)
「死にはしないっ!封神流、風の構え…裂空斬!!」
僕に放てる最速の突きで虎王の心臓を狙ってみたんだけど。
「ほう?我が速度においつくか。」
(…なっ!?)
僕の一撃を回避不可能と悟ったのか、
虎王は左手を犠牲にして強引に攻撃を受け止めてみせたんだ。
(…自分から腕を!?)
あまりの潔さに驚いてしまったけれど、
この隙を見逃すつもりはない。
即座に刀を切り返すことで虎王の左手を引き裂いた。
「グアアアッ!!」
「この程度の実力なら葉漸師匠には遠く及ばない!!」
「ふんっ!なめるなぁぁぁ!!」
虎王は斬られて動かなくなった左手を自らの刀で斬り落として見せた。
「動かぬ手ならば、ないほうがましだ。」
(…くっ。)
すさまじい執念だ。
どうすればここまで戦いに集中できるのかが理解できない。
「ここまでして何のために戦うんだ!?」
「貴様らに我らの苦しみなど理解できまい!!」
苦しみ?
どういう意味だろうか?
何を指摘しているのかが分からないけれど、
虎王は左手の痛みを怒りに変えて斬りかかってきた。
「我らが目的を果たすには秘宝が必要なのだ。なんとしても奪い取って見せる!」
虎王の気迫によって室内の空気が冷え込んでいく。
そしてそれは比喩でも何でもなくて実際に冷気が漂い始めているようだ。
(周囲が凍り付いているのか…?)
何が起きているのかも分からない。
だけど突如として広がっていく冷気によって兵士達の接近が阻まれている様子だった。
(これが虎王の力なのか?)
あるいは虎王の仲間達の力なのかもしれないけれど。
これでは援軍の到着は期待できそうにない。
僕達だけで対処する必要がありそうだった。




