何らかの方法
《サイド:不動幻夜》
一晩の旅を終えた翌朝。
地獄谷から戻ってきた私と八雲は無事に命神宮に帰ってくることが出来た。
「ふう…。」
「さすがに今日は疲れたよな。」
「ああ。」
八雲の気持ちは嫌と言うほど理解できる。
昨夜の調査で地獄谷にたどり着くことは出来たのだが。
実際に目にしたことで地獄谷がどんな場所なのかを知ることが出来ると同時に、
あの地がどれほど危険な場所なのかを身をもって知ったからだ。
「まさかあれほどまで魍魎が蠢いているとはな…。」
正直に言って想像以上だった。
事前に集めた情報でも危険地帯だとは言われていたのだが、
まさか谷を埋め尽くすほどの魍魎がいるとは思ってもいなかったのだ。
「あれはまさしく地獄谷だったな。」
「だよなぁ。あんな場所を突破するなんて、どう考えても無謀だろ?」
ああ、そうだな。
魍魎の密集地帯を突破する方法など、どう考えても思い浮かばない。
「手持ちの護符を全てばらまいたとしても100メートルと進めずに打つ手なしだろう。」
「さすがにあれは親父でも無理じゃねえか?」
…だと思うのだが。
王城を一晩で壊滅させた父の実力ならば突破できるのではないかと思う気持ちもあった。
「もしかすると地獄谷を通り抜けられる方法があるのかもしれないな。」
少なくとも正体不明の少女達は生きて行動しているのだ。
正面突破とは異なる何らかの方法があると思っても不自然ではないはず。
「どうにかして少女達から話が聞ければ良いのだが…。」
「なら、次からはあの子達の捜索に切り替えるか?」
「…そうだな。そのほうが良いかもしれないな。」
正攻法で地獄谷を突破するのは不可能だ。
命神宮に残っている戦力を総動員すればどうにかなるかもしれないが、
数えきれないほどの死者を出すことになってしまうはず。
「ひとまず今日は体を休めて調査は明日からにしよう。」
「だな。それじゃあ今日はもう寝させてもらうぜ。」
「ああ、ゆっくり休むと良い。」
「…ん?兄貴はどうするんだ?」
「杞憂様に帰還の報告をしてから寝るつもりだ。そのあとは太極図の研究をしてみる。」
「ああ、あれか。良く分かんねえけど、読めたら俺にも教えてくれよな。」
「ははっ。読めたらな。」
全く自信はないが、とにかくやってみないことには始まらないからな。
「ひとまず杞憂様に報告に行ってくる。」
「おう。それじゃあな。」
「ああ。」
一旦、八雲とは神宮の入り口で別れて杞憂様に会いに行くことにした。




