何かが違う
(…さて、恭子様はしばらくいないようだが、これからどうするかな。)
杞憂様からの報告によると、ここ数日のうちに戦力を整えて父を迎え討つつもりらしい。
命神宮の全勢力で父を封じて、徒宗様や恭子様に私と八雲などの主力で直接戦うつもりでいるようだ。
ただ、一級陰陽師といっても宗徒様と恭子様を含めても現状では10人に満たないはず。
54名の一級陰陽師が手も足も出ないほどの敵を相手にするには分が悪すぎる。
地の利が意味をなさないことは王城での戦いで明らかであり、
数百人の陰陽師で取り囲むとはいえ数も意味をなさないだろう。
それに二級陰陽師達の結界がどれほど役に立つのかも疑問だ。
もちろんそんなことは杞憂様も分かっているはず。
それほど正面から戦っても勝ち目は薄い。
戦力が整うまでに作戦を考えると言っていたものの並みの方法では敗北は目に見えている。
「どうにか対抗策を用意出来ればいいんだが…。」
思考をめぐらせながら歩き続けているうちに神宮の裏手にある倉の前にたどり着いていた。
「倉にあるものは自由に使って良いと聞いているが、父が相手では役に立つ物があるかどうか…。」
あまり期待はできないと思いつつも倉の中へと足を踏み入れてみる。
(………。)
内部を一通り眺めてみたのだが、古い書物が大半で役に立つ物はなさそうだ。
「刀の類いは持っていってもいいのだが…。」
私も八雲も刃物の扱いは得意ではないからな。
不慣れな武器は持たないほうが良いだろう。
「…ん?」
不意に違和感を感じて刀が納められている台の奥に視線を向けてみた。
奥といっても台の向こう側には壁があるだけで、気にすることはないはずだ。
それなのに。
長年培ってきた感が何かを訴えている。
「何かが違う。この壁は何かがおかしい。」
刀のことは忘れて壁を丹念に調べてみた。
「…これか?」
壁に隣接する台座の裏側に何かの仕掛けがあるのだ。
「動かしてみるか。」
『ガコン』と壊れるような音がしたことで少し不安になってしまったのだが、
単にさび付いていただけなのか、若干不自然な動きはしていたが思ったよりも簡単に動かせた。
(…何が起きるんだ?)
『ガガガガガガッ……』と木と木が擦れあう音を響かせながら、壁の一部が動き出す。
「…隠し扉があったのか。」
扉の前に立って中に視線を向けてみる。
「どうやらこちらが正解のようだな。」
宝物庫と言ってもいいほど様々な物が収められているのだ。
今まで存在さえ知らなかった隠し部屋へと足を踏み入れてみる。
(…ほう。)
「陰陽師なら喉から手が出そうな物がずらりだな。」
法衣や杖など、数多くの一品が仕舞われているのだ。
見ただけで強力そうな呪符や何に使うか分からない物まであるのだが、
武具が多く収められているこの部屋の中にあって1つだけ不自然なものがあった。




