目障り
「失礼します。」
兄上の病室に入って近付いていく。
「お怪我の具合はどうですか?」
「くっ!!」
僕が姿を見せた瞬間に、兄上の表情があからさまに不満そうに変わってしまった。
「涼ぉぉ!!よくものこのこと俺の前に姿をあらわせたものだなっ!」
「あ、兄上…っ。」
「お前が国王代理を名乗ったことはすでに聞いているぞ!やはりお前は国王の地位を狙っていたんだな!!俺が動けぬ間に王位を掠め取るとは随分と汚いやり方ではないか!?誰がなんと言おうと、お前が国王を継ぐなど俺は断じて認めんぞ!!!」
「い、いえ…っ。違うのです、兄上。話を聞いてください!」
「聞く耳もたぬっ!国王の地位は決して貴様には渡さん!目障りだ!早々に立ち去れっ!!」
「兄上!」
「うるさいっ!さっさと出て行かんかっ!!」
(あ、兄上…。)
兄上は僕を追い出すために、手元に置いてあった剣を引き抜いて切っ先を向けてきた。
「お前の顔など見たくもない!一刻も早く俺の前から姿を消せっ!」
(………。)
やっぱり話し合いは無理なのだろうか。
まさかここまで激高するとは思っていなかったんだけど、
こうなってしまった以上は諦めるしかないのかもしれない。
「すみません…兄上。」
説得は不可能と判断して、早々に病室を出ることにした。
(…ふぅ。)
今の兄上は敵前逃亡の恥をさらしているからね。
国民は知らないとしても、関係者は皆知っているんだ。
現状では僕と兄上がまともに対立すれば兄上が国王になることは難しい。
だからこそ兄上はいつも以上に僕を憎んでいるのだと思う。
…だけど。
僕には国王を継ぐ意思はない。
それは常日頃から宣言しているし、回りの人達も知っていることだ。
それなのに兄上だけは常に僕を敵対視してくる。
僕にその気がなくても、周りが薦めれば国王の地位を受け入れる可能性があるとでも考えているのだろうか。
もちろん周りの意見に反発してまで国王の地位を蹴る理由はないから、
その可能性が0だとは言い切れないけれど。
兄上が普通に国王になるぶんには周りも反対なんてしないはずだ。
だからこそまで心配する必要はないと思うんだけど…。
それでも国王不在で兄上が動けない現状、国王代理として国をまとめている僕を見て不愉快になるのは仕方がないのかもしれない。
兄上ならこのまま成り行き任せで僕が国王の地位に即位してしまう可能性は十分にあると考えてしまうだろうからね。
(…結局、香澄様の言われた通りになってしまったね。)
こうなったらもう仕方がない。
兄上が復帰するのを見計らって城を出ることにしよう。
一応、僕としては国王としての業務に区切りをつけてから城を出るつもりだったんだけど、
兄上が話を聞こうとしないせいで引継ぎを諦めるしかなかった。
「とりあえず今後の予定を話し合う必要があるから城に戻ろう。」
今日は王都内の大臣を集めて夜遅くまで会議を行う予定になっている。
その場で兄上が復帰するまでの数日間だけ国王代理として活動することも話し合う予定なんだけど。
いくつかの雑務をこなしながら父上からの引継ぎを行いつつ今回の事件の報告もまとめあげなければいけないから、
おそらく会議が終わるのは夜中になってしまうだろうね。




