最大の敵対勢力
杞憂様の私室に移動した。
そして『コンコン』と戸を叩くと、杞憂様はすぐに返事をしてくれた。
「おお、帰ってきたか。入るが良い。」
「はい。失礼します。」
八雲と二人で部屋に入って杞憂様と向かい合い、
一礼してから空いている席に腰を下ろす。
「恭子様からお呼びだと聞いて伺ったのですが。」
「ああ。色々と進展があったからな。情報の共有をしておこうと思ったのだ。」
「進展、ですか?」
「うむ。涼王子と話し合って今後の方針を決めたものでな。」
ああ、そういうことか。
そう言えば杞憂様は昨夜の報告のために王城に行かれたはずだ。
一時的にとは言え国王代理として行動することになった涼王子と話し合ったのであれば、
今後の行動に関して相談するのは当然だからな。
何らかの進展があったのは十分に予測できる話だった。
「それで、どういった話になったのですか?」
「うむ。そのことだが、我等は急遽王城の警備を解任されることになった。」
(…は?解任!?)
「そ、それは責任をとらされたということでしょうか?」
「いやいや、そうではない。敵の目的がここにあると思われるからだ。」
「目的?」
「うむ。時雨は最大の敵対勢力である『ここ』を壊滅することも目的の一つにしているだろうからな。その可能性を考えて我らは全勢力を持って奴を迎え討つことになったのだ。幻夜と八雲よ。お前達の力も必要になるだろう。しばらくの間は神宮の警備に力を貸してはくれぬか?」
「ええ、もちろんです。」
父の目的が不明とは言え仮にもここでお世話になっている身だからな。
戦う相手が誰かに関係なく、
ここを守るために死力を尽くすのは当然のことだ。
「父を止めるために協力させていただきます。」
「…俺もか?」
「ああ、そうだ。時雨は我らが全力で対抗しても勝てるかどうかわからぬ相手だからな。ぜひとも二人の力を貸してほしい。」
「…そうか。わかった。それじゃあ親父との戦いが終わるまで大人しくしておくか。」
「すまんな。親子で戦わせるのは申し訳ないと思うのだが、今は人手不足で時雨に対抗できる戦力が足りないのだ。」
(…だろうな。)
主要な陰陽師は王城で全滅してしまっているからだ。
それなのに血の繋がりがあるという理由で私や八雲まで戦力から外してしまえば残った者達だけでは父を撃退することは出来ないだろう。
「今回の戦いは全て幻弥に一任する。わしは国王の葬儀で王城に出向かねばならんからな。恭子も時雨との戦いに備えて神宮内で大きな動きがあるために雑務に忙殺されることになるだろう。そうなれば数日のこととはいえ、みなが動けぬ間は幻夜に任せるしかない。」
「はい。出来る限りの努力はいたします。」
主要な者達が全滅したうえに杞憂様と恭子様が動けないとなると順番的に私か八雲が神宮内の陰陽師達をまとめるしかないからな。
…とは言え。
八雲は面倒臭がって神宮の指揮などやろうとはしないだろう。
そうなると必然的に私しかいないことになる。
「お任せください。」
「すまんな、無理を言って。」
「いえ、とりあえず今後の方針を考えるために八雲と相談してみます。」
「うむ。よろしく頼んだぞ。」
「はい!」
杞憂様との話し合いを終えたことで、
一旦この場を離れることにした。




