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THE HANGED MAN  作者: SEASONS
2日目
75/499

二人の少女

(…さて、と。)



それほどのんびりとしていられたわけではないものの。


少しは体を休めることが出来たように思う。



「そろそろ片付けるか。」


「おう。」


「いつもそうだが、今日も美味かったな。」


「だよなぁ。マジでいつ作ってるんだろうな?」



さあな。


恭子様のことは良く分からないが、

わざわざ毎日用意してくれているんだ。


今は素直に感謝しておけばいいだろう。



「とにかく先を急ぐぞ。」


「おう。」



お弁当を用意してくれた恭子様に感謝しながら、

八雲と共に空になった弁当箱を片付けていく。



そうして出立のための準備を進めていると。



「…うわっ!人がいるわよっ。」


「ちょ…っ?声を出したら気付かれるじゃない!」



(…はっ?)



「何だ!?」


「…誰かいるのか?」



突然聞こえた声に驚いて、八雲と二人で声のした方向へと振り返ってみると、

木々の隙間からこちらを観察している二人の少女の姿が見えた。



(…少女?)



年齢は八雲よりも年下だろうか?


17、8歳程度に思える。



(こんな場所に村人がいるのか?)



いや、そんなはずはない。



六詠山は数多くの陰陽師達が悪鬼の出現に備えて包囲している場所なのだ。


当然、周囲に村は存在しないし、

無力な村人が迷い込むはずもない。



「き、きみ達は…?」


「うわっ!?バレたっ!」


「だから騒ぐなと言ったでしょ!」



(………。)



声をかけてみたことで二人の少女は少し慌てた様子でこの場から逃げようとしている。



「とにかく帰るわよっ!」


「う、うん…。そうね…。」


「お、おいっ!」


「うわわわわわわわっ!」



八雲が追いかけようとしたことで少女達は一目散に逃げてしまった。



(…何だったんだ?)



こんなところに人がいる理由が理解できない。


とは言え、六詠山に迷い込んだと思われる少女達を放置するわけにもいかないだろう。



「八雲!」


「おう!」



彼女達が何者かは分からないが、

ひとまず追いかけてみることにした。



「待ってくれ!」


「んな逃げなくてもいいだろっ!」



逃げた少女達を追って山道を突き進む。


その間に微かにだが、少女達の声が聞こえてきた。



「だから外に出てはダメだと言ったでしょ?」


「だ、だって、こんなにすぐに見つかるなんて思ってなかったし…。」



どういうことだろうか?


どうしてここにいるのかは分からないが、

話の内容を考慮すれば二人は山中で迷子になっているわけではないようだ。



(自分達の意志でここにいるのか?)



そうとしか思えないのだが、

ここは魍魎が蔓延る危険地帯だ。



早々に保護しなければ少女達の命が危ぶまれる。



「とにかく振り切るのよっ。」


「う、うん。地獄谷まで逃げれば良いのよね?」


「ええ。今ならまだ通り抜けられるはずだから、追い付かれる心配はないわ。」


「そ、そうよね。」



(…うーん。)



二人は姉妹なのだろうか?


それほど似ているようには思えなかったが、

自由奔放な妹としっかり者の姉という雰囲気が感じられる。



まあ、全ての会話が聞き取れたわけではないのだが、

聞こえた範囲内ではこの程度だろうか。



(…それにしても、地獄谷か。)



彼女達の会話から推測すると、

二人は地獄谷の向こう側から訪れたことになる。



…とは言え。



地獄谷の向こう側には恐山しかないはずだ。


魑魅魍魎が巣食う地獄谷の向こう側。


そこにいるのは鬼と呼ばれる人に非ざる存在のはず。



(…まさか彼女達は?)



可能性はある。


魍魎が潜む地に普通の人間が住めるはずがないからだ。



だが、彼女達は7年前に遭遇した鬼とは根本的に異なっているように感じる。



少なくともあの時の鬼は会話なんて不可能だった。


それなのに目の前にいる少女達は話し合いが出来そうなうえに、

襲い掛かってくるどころか俺達から逃げようとしているのだ。



(…鬼ではないのか?)



だとすれば再び分からなくなってしまう。



彼女達は何者なのだろうか?



(…このまま追いかければ分かるのか?)



期待を感じると同時に、危険も感じる。



(…このままでは地獄谷に到達してしまうぞ。)



今はまだ噂でしか知らない場所だが、

八雲と二人だけでどうにか出来る場所ではないだろう。



(…ここは一旦、諦めるべきか?)



少なくとも少女達は意図的に地獄谷に向かっている。


ということは少女達を心配する必要はないはずだ。



(…どうする?)



今ならまだ引き返せる。


だが地獄谷に到達してからでは生きて帰れる保証はない。



「八雲!」


「…ちっ!」



どうやら八雲も同じ考えだったのだろう。


呼びかけただけで大人しく立ち止まってくれた。



「あいつらが何者なのか気になるが、これ以上の深追いは危険だよな。」


「ああ。」



すでに山頂を越えて中腹辺りまで進んでしまっているのだ。


このまま進めばすぐに地獄谷に到達してしまうだろう。



「心残りはあるが一旦、引き返そう。」


「だな。周囲の瘴気も濃すぎる。このままだと魍魎が溢れそうだぜ。」



ああ、分かっている。


だからこそ早急に引き返す必要があるのだ。



「急いで撤退するぞ!」



予定よりも奥深くまで進んでしまっていることで魍魎に囲まれる前に撤退することにした。




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