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THE HANGED MAN  作者: SEASONS
プロローグ
7/499

家庭環境

「お待たせいたしました。父上。」


「おお、来たか。涼よ。」



会話中の父上に話しかけてみると、

僕の知らない誰かと話をしていた父上は笑顔で出迎えてくれた。



「さすがにお前は行動が早いな。使いを出してからまだ5分も経っていないというのにもう来てくれたのか。」



(…ええ、まあ、はい。)



「特にすることもなくて暇でしたので…。」


「あ、ああ…そうか。そう言えばそうであったな。すまん。わしがもう少し庇ってやれれば良かったのだが…。」



(…い、いえ。)



今回のことは父上が謝るようなことじゃないんだ。



「父上には感謝しています。もしも父上が仲裁してくださらなければ今頃はまだお叱りの最中だったと思いますから。」


「ははははっ。そうかもしれんな。季更きさらももう少し落ち着いてくれればよいのだが、育ちが良すぎるせいか礼儀は厳しく躾けられているからな。自分と違う行動を見ると注意せずにはいられないのだろう。」



(…礼儀?)



本当にそうだろうか?


僕としてはそういう問題ではないように思うんだけど。


父上としては母上が僕を嫌っていることに気付いていないのかもしれない。



(あるいは信じたくないのかもしれないけれど…。)



親子で言い争うような状況は見たくないだろうからね。


だからこそ温和に話をまとめてくれようとしているんじゃないかな。



だけどね。


僕がどれだけ我慢をしたとしても母上の態度が変わるようには思えないんだ。



まあ、こればっかりは父上にもどうしようもないのかもしれないけど、

下手に庇えば僕に対する母上の態度がさらに厳しくなるのが目に見えているからね。



そうならないためにはある程度まで母上の言動に目をつぶる必要があるのかもしれない。


そうして不満を呟く程度で丸く収まるのなら直接的な被害はないからだ。



だから母上が怒っている間は僕はまだここに居られる。


だけど母上の態度が悪化してしまえば、おそらく僕はもうここにはいられない。



国外追放程度で済むのであればまだ良いけれど、

今後一生を牢屋の中という可能性だってあるかもしれないからね。



そうならないためにも大人しく怒られているほうが良い。


それが父上の出した結論じゃないかな。



「すまんな。お前には苦労をかける。」


「い、いえ…。そんな…。」



確かにあまり良い家庭環境ではないのかもしれない。


だけどこの程度の苦労ならきっと世界中にあるんじゃないかな。



完璧な幸せなんてそうそうないだろうからね。


だから今はまだ我慢できると考えていた。



「こうして何不自由なく生きていられるのは父上や母上のおかげです。それに王家の人間として生まれてきた以上は礼儀や作法を学ぶのは当然のことだと思いますので、今の生活が苦労だとかそんなふうには考えていません。」


「………。」



どうにかこの話題を終えようと努力してみたんだけど。


父上は僕の心を見透かすかのような瞳で僕を見つめていた。


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