国王代理として
《サイド:御神涼》
翌朝、僕は無事だった自室で目を覚ました。
最上階にある王室までは火の手が回っていなかったこともあって部屋が燃えることはなかったんだ。
まあ、一時は謁見の間まで火の手が延びていたんだけどね。
幻夜さん達の活動によって消火一晩で終了したらしい。
それに行方不明だった兄上は火の手から逃れるために地下の牢獄に逃げ込んでいたところを生存者の救出にあたっていた兵士達に発見されたようで、今は城下の病院で手当てを受けていると聞いている。
報告では不動さんに受けたと思われる怪我がいくつも見受けられたらしいけれど、ひとまず致命傷に至るような怪我はなかったそうだ。
もちろん完治するまでには数か月くらい必要だろうけどね。
それでもおそらく数日で復帰できるはずだ。
だけど今回の事件で多くの人々が殺されてしまったことで、あまり喜べるような気分にはならない。
なにより父上や師匠を含めた全ての死者はひとまず城下の大聖堂に安置されている状況だからね。
不動さんの襲撃が終わったとはいえ、
まだまだやらなければいけないことは沢山あるんだ。
そういう事情があって国王不在の間は兄上が戻るまでの間だけ城に留まって、兄上が復帰すると同時に城を出るつもりでいる。
まあ、本心を言えばすぐにでも不動さんの追跡を行いたいんだけどね。
だけど唯も精神的に落ち込んでいる状態ということもあって、
せめて数日間だけでも国王代理として働くつもりでいるんだ。
そのために準備を整えていると、『コンコン。』と扉を叩く音が聞こえてきた。
「ん?鍵は開いてるよ。」
「あ、はい。失礼します。」
ああ、やっぱり唯か。
「おはよう。」
「おはようございます。お兄様。」
昨日は色々とあったけれど、心の整理は出来たのだろうか?
見た感じだといつもほどではないけれど、ちゃんと笑顔を浮かべられているようには思える。
「ちゃんと眠れたかい?」
「…い、いえ。」
まあ、そうだろうね。
さすがにそこまで落ち着きを取り戻すことは出来なかったようだ。
それでもこうして自分の意志で行動できるようになっただけでも良かったと思うべきかな。
(…昨日は酷かったからね。)
師匠だけではなくて父上と母上まで亡くなってしまったから仕方がない。
僕としても父上の死は悲しかったけれど、
唯からしてみれば実の母親まで殺されてしまったわけだからね。
僕以上に悲しみが大きかったはずだ。
それなのに。
唯はすでに悲しみをこらえて気丈に振る舞ってくれている。
「あの…お兄様。宗徒様が謁見の間でお待ちです。」
ああ、もうそんな時間なのか。
少し眠り過ぎたのかもしれない。
なかなか眠れなかったことで起きるのがいつもより遅くなってしまったようだ。
「分かったよ。僕も色々と聞きたいことがあるから話を聞きに行こう。」
「はいっ。」
これからどんな報告が聞けるのかは分からないけれど。
ひとまず唯と一緒に謁見の間に向かうことにした。




