外法、魂寄せ
《サイド:????》
(…まさか一足先に秘宝を奪われてしまうとはな。)
出来ることなら被害を最小限に抑えて目的を果たしたかったのだが、
どうやらそうもいかなくなってしまったようだ。
(…こうなってしまってはもはや強硬手段に出るしかあるまい。)
上手く秘宝を手に入れることが出来れば最短で計画を進められたのだが、
秘宝の入手に失敗した以上は別の手段を考えるしかないのだ。
「作戦は第2案に移行する。」
「「「「………。」」」」
俺の指示に誰も反論しなかったが、
それでも作戦を実行するのを躊躇っている様子は感じられた。
(…まあ、それも当然か。)
出来ることならこの手段は避けたかったからだ。
だが秘宝が手に入れられなかったからにはもう手段を選ぶ余裕はない。
「これより外法『魂寄せ』の儀を執り行う。」
「「「「…っ!!」」」」
俺の発言によって4人の弟子達に動揺が走るが、
それでも彼等は覚悟を秘めた瞳で俺の行動を見守ってくれていた。
「ここまでついてきてくれたお前達には心から感謝している。」
「時雨様…。」
白装束を身にまとう一番弟子が話しかけてくる。
「我等は皆、時雨様に忠誠を誓う身です。例えどのような結果になろうとも、最後までお供させていただきます。」
(…すまないな。)
俺の我がままによって争いに巻き込んでしまったこと。
それだけは悔やんでも悔やみきれない。
(せめて世界の真実など知らなければ…。)
地獄谷を越えようなどとは思わずに。
恐山に挑もうなどと思わなければ、
このような事態に陥ることはなかっただろう。
(…だが、俺達は知ってしまったのだ。)
この世界の真実を。
歪められた歴史を。
そして狂った運命を知ってしまったのだ。
(…もはや時の流れは止められん。)
知ってしまった以上は狂ってしまった運命を正す必要があるのだ。
「これから行う魂寄せの儀によって俺は俺でなくなるかもしれん。だからその時は…お前達の判断に任せる。」
俺を殺すも良し。
この場を去るも良し。
「お前達の自由にしてくれればいい。」
「時雨様…。」
「もはや悔いはない。」
この身一つで願いが叶うのであれば。
どんな苦しみも耐えて見せよう。
「…さらばだ。」
「「「「時雨様っ!!」」」」
弟子達に見守られながら魂寄せの儀を発動する。
その瞬間に。
『…我等が怨念を受け取るのだ…。』
何者かの声が聞こえたような気がした。
(…お前は、誰だ?)
『…天照…。』
(…っ!?)
そうか。
やはり、お前も存在するのか。
『…輪廻の呪縛がある限り…我らは永遠に不滅だ…。』
(…だろうな。)
だからこそ俺はこの世界と戦う決意をしたのだ。
『…我等を受け入れよ…そして共に闇に堕ちるのだ…。』
(…ああ、良いだろう。)
もとよりそのつもりだ。
(…俺の体を依代として蘇れ!!)
『…心強き者よ…汝の願いを聞き入れよう…。』
魂寄せの儀によって悪しき力が体の中に流れ込んでくる。
(ぐ…っ!…うああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!)
体中に激痛が走り抜ける。
例えるなら身体が焼け落ちていく感覚だろうか。
まるで体が腐り落ちていくかのような異様な感覚だけが繰り返されて、
心がズタズタに切り裂かれていく。
地獄の苦しみとは、こういうことを言うのかもしれない。
体中の痛みは当然として。
心が汚染される悪寒が広がり。
魂が砕ける感覚が断続して繰り返されていくのだ。
(…こ、これがっ!)
これが外法の代償であり。
悪鬼へと至る呪いでもあるのだろう。
(…だが、耐えて見せるっ!)
ここで屈するわけにはいかないのだ。
ここで目的を見失いわけにはいかない。
(…幻夜っ!…八雲っ!!)
王都に残してきた我が子を思いながら必死に苦しみに耐える。
そうして永遠に思える時間を耐え続けることによって、唐突に意識が途絶えてしまった。




