願わくば
(…ん?あれ?)
誰かいるのだろうか?
謁見の間を出ようとしたところで、人の気配を感じたんだ。
「…誰かいるのですか?」
「やっぱり、と言うと語弊があるけれど。やっぱりこんな結果になってしまったのね。」
(…この声は?)
聞き覚えがある。
それほど関わりがあるわけではないけれど。
何度か話をしたことがある人だからだ。
(…だけど、どうしてここに?)
今まで彼女が王城に来たことは一度もないはず。
少なくとも僕の記憶には存在しない。
それなのに何故か、今、この場所で、僕の目の前にいるんだ。
「あなたは、確か…?」
「杞憂恭子よ。」
(…やっぱりそうなのか。)
予想通り知っている人物だった。
「どうしてここに?」
「結末を見届けるため、としか言いようがないわね。」
(…結末?)
「貴方と唯様なら不動時雨に対抗することは分かっていたから、できれば姿を消していたまま遭遇しないことを祈っていたんだけど。ひとまず心配は無用だったようね。二人とも無事なようで安心したわ。」
(………。)
どういうことだ?
今の言葉をそのまま解釈するなら、
彼女はここに不動さんが来ることを知っていたことになる。
そのうえで僕達と敵対することを知っていたということだ。
「貴女は…何を知っているのですか?」
「…そうね。これまでのいきさつや、これからどうなるのか。ある程度は把握してるつもりよ。」
「だとしたら、何が起きているのかを教えてもらえませんか?」
「それは私の口から説明しなくてもすぐに理解できるわ。」
(………。)
恭子さんは説明を放棄してしまったけれど。
何故か僕の顔をまっすぐに見つめている。
「やはり器は貴方だったようね。貴方がこれからどんな行動をとるのかは知らないけれど…。もしも願いが叶うのなら、やさしい光であることを祈っておくわ。」
(…光?)
曖昧な言葉を残した恭子さんは僕に向けて深々と礼をしてから、謁見の間を抜けてどこかに行ってしまった。
(…何だったんだ?)
分からない。
彼女は何を知っているのだろうか?
まだまだ戸惑いを隠せないけれど。
居なくなってしまったものは仕方がない。
無理に追いかけても何も説明してくれそうにはないんだ。
それよりも今は父上の状況を確認するべきだ。
そのために急いで父上の寝室へと向かうことにした。




