一番乗り
(…うーん。)
父上の友人ってどんな人なんだろう?
良く分からないながらも、連絡を受けてからすぐに謁見の間に移動した。
(…ん?あの人がそうなのかな?)
扉は開かれているから近付くだけで室内が丸見えだったんだけど、
玉座に座っている父上は僕の知らない誰かと話をしている様子だった。
(…やっぱり初対面になるのかな?)
今はまだ後ろ姿しか見えないけれど、見覚えはないと思う。
もしかすると僕がまだ生まれて間もない赤ん坊の頃とかに会っているのかもしれないけれど、
それぐらい昔の話になると覚えていないのは当然になってくる。
それはまあどちらでも良いんだけど。
どうやらまだ兄上と母上は来ていないようだ。
唯の姿も見えないことを考えると、僕が一番最初だったのかもしれない。
(…もしかすると僕が最初に報告を受けたのかな?)
使いが一人だけだったとは限らないものの。
唯は自室で眠る予定だっただろうから準備に時間がかかるのは仕方がない。
それに兄上は人と会うために準備を急ぐような行動はとらない人だから自然と来るのが遅くなるのもいつものことだ。
(…それでも母上は常に父上の傍にいるはずなんだけど?)
何故か今はここにいないようだった。
どこかに出かけてるのかな?
母上にどういう事情があるのかは分からないけれど、
いつまでも一人で考えていても仕方がない。
まずは挨拶を済ませたほうが良いと思う。
(…まあ、これはこれで気が楽かな。)
母上と兄上がいないんだ。
今の内に挨拶を済ませて出て行ってしまえば嫌な思いをせずに済むかもしれない。
(…うん。そうしよう。)
母上がどこにいるのかは分からないけれど兄上が訪れる前にここを離れる。
そのために二人に近づいてみることにした。