二匹目
唯が玄武を倒した直後に、
今度は師匠が戦闘を開始したようだ。
「ふむ。初めて見たが、なるほど恐ろしいほどの美しさだな。」
師匠の相手は竜の姿をした青竜のはず。
だけどその姿を見ることは出来ないから、今は想像することしか出来ない。
「まさか竜と戦う日がこようとは思ってもいなかったが…。」
悠々と空を泳ぐ青竜に視線を向ける師匠は、
一歩も臆すことなく刀に手をかけながらまっすぐに歩き続けていく。
「いかに陰陽の理に置いて相性で勝っていようとも、空を飛ぶ相手を刀一本で倒すと言うのはなかなか難しいものだな。」
ええ、そうですよね。
実力がどうとか。
相性がどうとか。
そんなことよりも攻撃が届くかどうかが死活問題だからだ。
それなのに。
師匠はどこか戦いを楽しんでいるように思えてしまう。
「わしには涼達のような超常の力はない。だが如何に相手が強大と言えども倒せぬ存在など在りはしないものだ。」
刀を抜いた師匠が構えを取る。
「封神流、山の構え。」
体勢を低くして刀の先を地に立てる。
これは防御の型で、主に騎馬や大型の動物と戦うことを想定した構えだ。
「如何に空を飛ぼうとも攻撃の一瞬はわしに近づかねばならん。体勢を低くすれば、なおさら下まで下降せねば攻撃できまい。近づいてきた瞬間を狙って一気に斬りおとすまでだ。」
そう。
敵を引き付けて迎撃するための構えだからこそ、
空を飛ぶ相手にも有効的な戦法になる。
「さて…。」
ここからが重要なんだけど。
肝心の青竜が近付いてこないことには戦いを終えることが出来ない。
「まずは一撃入れておくか。」
唯一の遠距離攻撃となる投擲。
懐から取り出した短刀で青竜に先制攻撃を仕掛けるようだ。
「この程度では威力は期待できないが…。」
短刀を投げて青竜を狙い撃つ。
その攻撃が届いたかどうかは分からないけれど、
師匠の殺気に反応した青竜が師匠めがけて一気に下降して襲い掛かるのは感じられた。
『キシャァァァァァァァァッ!!!』
「ふふっ。山の構え、その真の太刀を見せてやろう。」
しゃがみこんだ体勢から、師匠が真上に向かって跳躍する。
「封神流、第1の太刀、疾風斬!!」
放たれたのは居合切りだ。
全力で振りぬいた一撃が青竜の体を斬り裂く。
『!!!!!!!』
見えないのがもどかしいけれど、
青竜は喉を切り裂かれたのだろうか?
悲鳴をあげることさえできずに絶命したようだ。
「ふむ。式神程度では全力を出すまでもないか。」
(…さすが師匠。)
師匠は刀についた返り血を振り払ってから納刀したようだね。
まだまだ余裕を見せながら息1つ乱すことなく戦いを終えて、その場に腰を下ろすのが感じられた。
「さて、残り何匹か分からぬが、皆が無事に勝つことを信じて待つことにしようか。」
僅か一太刀。
それだけで青竜を撃破した師匠も無事に戦いを終えたようだった。




