一匹目
《サイド:御神涼》
四方に進んだ僕達は、それぞれの地で四聖獣との戦いを始めることにした。
(…ああ、なるほど。これは便利だね。)
全体的に薄暗い一本道だけど。
結界の内部は空間が繋がり合っているようで、見えない場所にいるみんなの声が聞こえてくるんだ。
「あなたが玄武なのですね。」
最初に通路を選んだ唯が、亀の姿を持つ聖獣を発見したようだ。
『グゥゥゥゥゥゥゥゥ』
玄武は低い声でうなり声を上げている。
「話しても通じそうにありませんね。」
話し合うことを諦めたのかな?
唯は戦いの体勢に入ったようだ。
「お兄様のためにも負けるわけにはいきません。申し訳ありませんが結界を破壊します。」
見えなくても真剣な顔つきで玄武と向き合う唯の姿が感じられる。
(…もしかしてこれが気配を感じるということなのか?)
父上や唯が他人の気配を感じることが出来るように、もしかすると僕もみんなの気配を感じ取っているのかもしれない。
(…結界の内部は意識を共有してるような状況だから、かな?)
自分でも良く分からないけれど。
みんながどうしているのかが何となく感じられるんだ。
『ガァァァァァッ!!!』
唯の殺気に反応したのだろうか?
玄武が唯に向かって走り出す気配がした。
(…唯。)
おそらく玄武は巨大な体を利用して唯を踏み潰しにかかるつもりなのだと思う。
(…大丈夫なのか?)
不安を感じてしまうんだけど、
玄武と対峙する唯は堂々とした態度を崩さなかった。
「鉄壁を誇る玄武と力比べをするつもりは在りません。少々ずるいかもしれませんが…急々如律令、汝の動きを禁ずる!」
(…なるほど、そういう方法もあるのか。)
陰陽術の理によって、玄武は動きを止めたようだ。
「たとえ聖獣であろうとも式神である以上は陰陽の理には逆らえません。」
だろうね。
むしろ式神だからこそ、とも言えるだろうけれど。
唯の力によって玄武は動きを封じられてしまったようだ。
だけど唯の攻撃はこれだけでは終わらない。
「急々如律令、汝の存在を禁ずる。」
『キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』
玄武の咆哮が響き渡った。
戦いそのものが見えないことではっきりとしたことは言えないけれど、
おそらく今の攻撃で玄武は倒れたはずだ。
「王族が陰陽術を覚えることには意味がないと仁お兄様はよく言っていました。確かに普段の生活では意味がないかもしれません。ですが…戦うことでしか手に入れられないものがあるのも事実です。」
ああ、そうだね。
僕も唯と同意見だった。
まあ、僕の場合は王城を出ても一人で生きて行ける力が欲しかったというのが本音だけどね。
それでも戦う力があったほうが便利なのは間違いない。
「これで一匹目。お兄様と葉漸様なら心配は要らないと思うけれど…。」
玄武は陰陽術の理に負けて消滅したらしい。
そうして勝利が確定した唯は、親友の渚が結界を脱出できるように祈りを捧げていた。




