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THE HANGED MAN  作者: SEASONS
1日目
51/499

召喚の儀式

《サイド:不動幻夜》

(…ふぅ。)



命神宮の最奥にある杞憂様のお屋敷の中心にある宗徒様の私室。


そこで私は杞憂様と向かい合って座っている。



「どうであった?」



杞憂様が重苦しい面持ちで尋ねてきた。



「何らかの異変は見つかったか?」


「はい。やはりあの場所で召喚の儀式が行われていたようです。」



王都の内部を巡回していた陰陽師達からの報告を受けて王都の北区にある廃屋の調査に向かっていたのだが、

無人のはずの屋敷には大規模な召喚の儀式を行った形跡が残っていたのだ。



「言い難いのですが…あれほど大規模な儀式を秘密裏ひみつりに行っていたとなると、考えられる犯人は限られてきます。」


「うむ…。数時間前から不穏な気配を感じてはいたが、やはり…。」



(…ええ。)



認めたくはないものの。


他に思い浮かぶ人物はいないのだ。



「儀式の現場に残されていた物証だけでは判断しきれませんが、最有力候補は一人しか考えられません。」


「一体、何を召喚しようとしたのか…。」



それは分からない。


だが、犯人は推測できる。



「状況が状況だけに…。」



深刻な表情で言葉をつむいでしまう。



「父の可能性が最有力かと…。」


「やはりそれ以外は考えられぬか…。」



(…はい。)



「どうされますか?」


「もしも儀式が成功していて、時雨が行動しているとすれば…。」


「どこかを襲撃するつもりなのでしょうか?」


「おそらくは…な。」


「父は一体何を?」


「分からん。あやつが何を考えているのかは分からんが、王都の内部で大規模な召喚の儀を行う以上、目的は王都の中にあると考えるべきだろう。」



やはり王都の中か。



父が陰陽師の掟を破ってまで召喚の儀式を行ったのは間違いないだろう。



だが、何のために?


その理由が分からなかった。



「父はどこに攻撃を仕掛けるつもりなのでしょうか?」


「時雨のことだ。自らの目的を果たすために最善の手段を選ぶつもりだろうな。」



最善の手段?



「それはどういうことですか?」


「時雨は優秀な男だ。だがそれでも国を相手にして戦えるほどではない。」



それは、まあ父に限らず誰もがそうだろう。



「だからこそ力を求めるはずだ。」



(…力を?)



「世界を敵に回しても戦えるだけの力。それを手に入れるためならばどんな手段でも取るだろう。」



力を手に入れる方法?


もしもそんな都合の良いモノがあるとすれば?



(…ま、まさかっ!?)



「王城に攻め入るというのですか!?」



城の地下には宝物庫があり、そこには人の手には余る秘宝が隠されていると聞いている。



「まさか父は秘宝を手に入れるために?」


「その可能性が高いだろうな。」



父が秘宝を?



「どうしてそのようなことを?」


「そうでもしなければ叶えられん目的があるということだ。」



父の目的。


それもまだ不明のままだ。



「杞憂様は父の目的をご存じなのですか?」


「いや…知らん。だが推測は出来る。おそらく時雨は秘宝の力を使って世界を変えるつもりなのだろう。」



世界を変える?



「ようやく陰陽術が世に認められてきたというのに…。再び暗黒の時代が訪れることになろうとはな…。」



どういう意味だろうか?



「この地で陰陽師を育てるようになってからおよそ50年。歴代の陰陽師達の活躍によって世間に認められるようになってきたというのに、まさか時雨が反乱を起こすとは…。」



(………。)



確かに、ここで父が王城を襲えば反乱は否定できない。


だが今はまだその判断は時期尚早のはずだ。



「杞憂様は何故、父が反乱を起こすと考えているのですか?」



状況証拠でしかないが、

父上が何らかの召喚の儀式を行ったのは間違いないだろう。



それも無断で大規模な儀式を行ったことで、陰陽師の掟を破ったのは間違いないと思われる。


だがそれがそのまま反乱に繋がるかどうかは別問題のはずだ。



「杞憂様は何を知っているのですか?」



そして父上は何を知ってしまったのだろうか?



「教えていただけませんか?」



父上と杞憂様は何を話し合っていたのか?



そして世界の罪とは?


歪められた歴史とは?


それらを知ることが出来れば父の目的も分かると思うのだが。



「答えは自ら探し出すのだ。そうでなければ意味がない。」



杞憂様は頑なに説明を避けていた。



「全てを説明することは出来ないが、時雨が目的を達するためには秘宝の力が必要になる。だが秘宝を手に入れるためには王城に攻め込まねばならん。だからこそ時雨は反旗を翻してでも戦いを仕掛けてくるはずだ。それが反乱の根拠と思えばいい。」



(………。)



「とは言え、これまでの努力を無に帰すのは避けなければならんからな。時雨が動き出す前に、なんとか先手を打つ必要があるだろう。」



「…分かりました。出来る限りの手は尽くします。」


「うむ。頼む。」


「はい。まずは王城の防衛力を高めるために門下生の一部を研修と称して王城に送り込みましょう。」


「それも良いが、それだけでは足りるまい。幻弥よ、お主自身も門下生の指導の役目を持って王城に入り、御神国王の護衛につくのだ。」


「はい!かしこまりました。」


「うむ。時雨がいつ動き出すのか分からぬ以上、一刻の猶予もあるまい。門下生には明日の朝一番に王城に向かわせるが、幻夜は一足先に王城に入り準備を整えておいて欲しい。」


「分かりました。今夜中に準備を整えておきます。」


「ああ、全てが取り越し苦労であればよいのだが…。」


「父が何かを企んでいるのは事実です。まずは私達にできることをしましょう。」


「そうだな。蔵にあるものは自由に使ってよい。陰陽師の名を守るために最善を尽くすのだ。」


「分かりました!」



話し合いを終えたことで急いで杞憂様の部屋を出ることにした。


そしてすぐに行動を開始する。



(…まずは蔵に向かおう。)



必要なものを集めて戦闘の準備を整えるべきだ。



「…とは言え、よりにもよって父が相手か。大きな争いとならなければ良いのだが…。」



大きくため息をつきながらも、

まずはこれからのことを考えることにした。


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