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THE HANGED MAN  作者: SEASONS
1日目
45/499

外出の許可

(…ふぅ。)



呼吸を整えてから杞憂様の私室の前に立って扉を叩く。


そして中にいるはずの杞憂様に話しかけることにした。



「幻夜です。ただいま戻りました。」


「…来たか。」



(………。)



杞憂様は俺達の存在に気付いていなかったのだろうか?


扉の向こう側の状況は分からないが、少し動揺するような気配が感じられた。



「恭子様からお呼びだと聞いたのですが?」


「ああ、そうだったな。入りたまえ。」



(………。)



どうも呼び出したことを忘れていた雰囲気だが、

それでも扉の向こう側からは威圧感たっぷりの声が返ってきた。



だからだろうか。



ただそれだけのことで、父とはまた違った緊張感を感じてしまう。



「失礼します。」


「うむ。まずは座りたまえ。」


「はい。」



杞憂様に言われるままに席につく。


そのあとで声をかけようとしたところで、先に話しかけられてしまった。



「八雲はどうした?」


「そ、それは…。」



どう答えるべきだろうか?



先程の経緯を説明するのは簡単なのだが、

素直に話をして良いものなのだろうか?



「どうした?何を考えている?」


「あ、いえ…。その…。」


「…ふむ。」



俺の態度から何かを察したのだろうか?


杞憂様の表情がさらに険しくなったように感じられた。



「先程の話を聞いていたのだな?」


「は、はい…。」


「そうか。それで八雲は時雨を追ったか?」


「そ、そうです。」


「…やはりか。」



説明するまでもなく、

杞憂様に見破られてしまっていた。



「それで、どこまで聞いていた?」


「その…。杞憂様の声までは聞こえなかったのですが、父が何かを問いただしている声だけは僅かに…。」


「だとすると、真相までは聞こえていないようだな。」


「先程も父が言っていましたが、その真相と言うのは何なのですか?」


「…知りたいか?」


「教えていただけるのであれば。」


「…そうか。それではダメだな。」



(…え?)



「答えとは教えを乞うものではなく、自ら見出すものだ。時雨は自らの手で真相にたどり着いた。だがお前はまだ答えに至るための疑問にさえたどり着いていない。それでは話を聞いても理解は及ばないだろう。」


「それはつまり…?」


「今ここで真相を伝えても時間の無駄ということだ。」



(………。)



そもそもの問題を理解していない者に答えを判断することは出来ないということだろう。


杞憂様は意図的に説明を避けていた。



「真実を知りたければ時雨を追え。その先に待つ答えが希望か絶望かはお前達次第だがな。」



希望か?絶望か?



それほどまでに大きく分かれる何かなのだろうか。



「急に時雨が戻ってきたことで親子の再会をと考えて呼び出していたのだが、どうやらそんな悠長なことを言っていられる状況ではないようだ。これから時雨がどうするつもりかは知らないが、あまり良い予感はしないからな。少し警戒したほうが良いかもしれん。」



(…は?警戒?)



「父をですか?」


「ああ、そうだ。もしも時雨が裏切るようなことがあれば、我等陰陽師の立場はひっくり返るかもしれんからな。」



父が裏切る?


一体、誰を?



(…いや、何を、と考えるべきか?)



「父は何をしようとしているのですか?」


「それは分からん。だが、時雨の目は何かを決意していた。おそらくここへ戻ってきたのは最後の確認だったのだろう。」



最後の確認?



「時雨は真相に気付いた。そしてこの世界の罪に気づいた。」



また、世界の罪か。



父にしろ杞憂様にしろ、言葉を濁し過ぎていて理解が追い付かない。



「世界の罪とは何なのですか?」


「それが歪められた歴史と言うことだ。」



さっぱり意味が分からない。


全く理解できないのだが、

要するに歴史が改変されているということなのだろうか?


だとしても、それが父の裏切りとどう繋がるのかが分からない。



「杞憂様は全てご存じなのですか?」


「ああ。おそらく全てを知っている。」



(………。)



杞憂様は何を知っているのだろうか?



「杞憂様も真相というものにたどり着いたのですか?」


「…いや。私は話を聞いただけだ。実際にこの目で確認したわけではない。」



聞いただけ?



「それでも時雨より多くの真実を知っているつもりだ。」



父よりも?


どういうことだろうか?



(…いや、そもそも誰に聞いたのだろうか。)



父は自ら真相にたどり着いた。


だが杞憂様は話を聞いただけだという。


そんな二人の違いは明らかだ。


父と違って杞憂様は別の誰かから話を聞いたことになる。



「杞憂様は誰に話を聞いたのですか?」


「…ふふっ。そこに気付くか。さすがに幻夜は頭の回転が速いな。」


「い、いえ。」


「謙遜するな。お前の考えは間違っていないからな。だが、約束で私からは何も言えないのだ。」



約束?


誰との?



「真実を知りたければ自らの手で調べるといい。私から話すことは出来ないが、止めるつもりもないからな。ここから先は自由にしなさい。」



自由に調べる?



「今日から外出の許可を出そう。すでに無断外出していたようだが、今となっては注意する必要もない。時雨を追うも良し、別の方法で真相にたどり着くも良し、自らが思う最善の方法を模索して見せよ。」



(…最善の方法。)



父が常々語っていた言葉。


それが杞憂様からも聞かされたのだ。



(…これは調べる必要がありそうだな。)



先程までは父を追えば良いと考えていたのだが、

どうやらそれだけでは済まないらしい。



「少し考えてみます。」


「うむ。出来ることならば平穏な結果になれば良いのだが…こればかりは時雨の行動を見守るしかあるまい。」



(…父の行動か。)



父が裏切るかもしれないという言葉の意味も分からないままだが、

ひとまず今は様子を見るということで杞憂様との話は終わってしまった。



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