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THE HANGED MAN  作者: SEASONS
1日目
43/499

命神宮

王都の北部にある命神宮。


ここは歴代の王族を祭る国内最古の神社でもある。



だからこそ国内において神社の数は100を超えるものの、

神宮を名乗れるのはここだけであり、神宮内で神官になれるのは陰陽師だけだと法で定められている。


そして命神宮は各地から訪れる陰陽師の入門希望者の育成も担う教育の場としての面もあり、

陰陽師を志す多くの者達が日々修練を行う光景がみられる。



そういった流れがあるためにほぼ全ての陰陽師がこの神宮に所属していることになるのだが、

歴代の王族を祭る地として役割があるために有事の際には軍に所属することになることも法で定められている。



…とは言え。



基本的には独自の運営が認められているからな。


よほどのことがない限りは軍に組み込まれることなどないだろう。



だから一般的には陰陽師を志す者が訪れる聖地として広く知られている。



命神宮に入門して、ここを巣立つ。


それが陰陽師として最高峰の栄誉であり、世界で通用する実力者として認められることでもあるのだ。



そのため俺と八雲もここに預けられることになり、

数年ほどこの地で過ごしていたのだが、

そろそろ今後の方針を考えるべきかもしれない。



さすがにいつまでも門下生というわけにはいかないからな。


ここを出てからどうするかも考えるべきだろう。



軍に所属して国のために戦うか?


それとも他国に放浪の旅に出るか?


あるいは父のようにどこにも所属せずに魍魎狩りを行うか?



考えられる方法は幾つもあるのだが、

結論を出す前に父や八雲の考えも聞いてみたいとは思っている。



今すぐに決めなければならないということはないからな。


ひとまず今は保留にしている。



(…まあ、それはそれとしてだ。)



杞憂様から呼び出された理由は何なのだろうか。


まさか一日留守にした程度で本当にお説教を受けるとは思っていないのだが、

だからといって他に思い当たるようなことはない。



(…何かあったのだろうか?)



考え事をしながら敷地内を移動していく。


そうして杞憂様の私室へ訪れようとしている途中で不意に人の話し声が聞こえてきた。



「…お前は知っていたのか?」



(…ん?知っていた?)



何を話しているのだろうか?


質問の意味は分からないが、これは父の声だ。



(…すでに戻っていたのか。)



わざわざ六詠山まで捜しに行ったにもかかわらず、

どうやら父は一足先に命神宮に戻っていたらしい。


そして今は杞憂様のお部屋で何かを話し合っているようだ。



「…なるほどな。まさか全てを知ったうえで黙っていたとはな。」



黙っていた?



「…分かっているのか?これは陰陽師の根幹を覆すほどの真相なのだぞ?」



真相?


それも陰陽師の根幹こんかんくつがえすとはどういうことだろうか?



「…この事実が明るみに出た時に我々陰陽師は…いや、この世界そのものが科せられた罪の重さに気付くだろう。」



罪の重さ?


父は何を言っているのだろうか?



詳しい事情は分からないが、下手に近づきにくい雰囲気が漂っている。



(…少し様子を見るべきか?)



何も知らないフリをして入室するという手もあるが、

おそらくその場合は二人の会話が中断されるだけで詳しい事情を聞かせてもらえることはないだろう。



…とは言え。



ここで盗み聞きと言うのもまずい気がする。



(…どうする?)



何気なく八雲に振り返ってみると、

八雲も真剣な表情で考えている様子だった。



もうすこしだけ様子を見るか。


それが最善だと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。



「…もういい。これ以上、話すことはないからな。」



様子を見るまでもなく、父の話は打ち切られてしまったからだ。



「………。これからどうするかだと?そんなものは決まっている。俺は俺の道を行くだけだ。」



話し合いは徒労に終わってしまったのか、

立ち上がった父が動き出す気配を感じる。



(…まずいな。)



この距離はまずい。


もしも父が出てきたら鉢合わせしてしまうだろう。



(…何も聞いていないフリをするか?)



それしか方法がないと思ったのだが、その考えすら甘かったようだな。


杞憂様の私室から出てきた父はすでに俺と八雲の存在に気付いていたようで、特に驚いた様子も見せずに近づいてくるからだ。



「幻夜、八雲。」



(………。)



「………。」



普段とは違う父の雰囲気によって、寒気すら感じる瞬間だった。



「お前達はここに残れ。そして世界の真実を見届けろ。」



世界の真実?



「何を言ってるんだ?」


「いずれ知ることになる。この世界の真相を。そして歪められた歴史を、だ。」



歪められた歴史?



その意味さえ分からなかったが、

父はそれ以上何も言わずに俺達の前から立ち去ってしまった。




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