『番外編』母の想い
《サイド:御神季更》
(………。)
昼食の時間。
今日もテーブルを囲うように武尊と私と仁の3人が席についているわ。
だけどこの場に唯はいない。
王族として食事の席にはちゃんと集まりなさいと何度も注意しているのに、あの子は私の言うことを聞こうとしなかったのよ。
だからでしょうね。
武尊は平静を保っているけれど、食事の席に唯が姿を見せないことに対して仁がイラついているのはすぐに分かったわ。
「唯はどうした!?」
「そ、それは…っ。」
仁に尋ねられてすぐに執事の一人が頭を下げる。
そうして説明を避けて口ごもる執事の様子を見ただけで理由は聞くまでもないわよね。
「あいつはまだ涼と関わっているのか!?」
「…………」
仁の質問に執事は沈黙で返す。
その行動は決して褒められてものではないけれど、これはまあ仕方がないでしょうね。
基本的に貴族連中は次期国王である仁に味方しているけれど、城内の過半数をしめる執事や侍女達のほどんどは唯と涼の味方だからよ。
だから二人に迷惑がかかるような発言は絶対にしないわ。
(…相変わらず厄介ね。)
執事の態度を見て仁がさらに表情をゆがめているけれど。
執事を責めたところで意味がないと判断したのかしら?
今回は大人しく追求をあきらめたようね。
「ふん。わが妹ながら嘆かわしい。あんな男のどこが良いのか…。」
(………。)
本気で思っているのかしら?
だとしたらもう少し自分の立場を考えるべきだと思うわ。
(…悔しいけれど。)
武尊を含めた大半の人間が仁よりも涼のほうが人として遥かに上だと思っているはずだからよ。
それは私も同じで、それがわかっているからこそなおのこと涼の存在に恐怖を感じてしまうの。
(…ふぅ)
困った子ね。
自らの息子のふがいなさ。
それは誰よりも母である私が最も良く知っているわ。
もちろん次期国王として十分な資質を持っているとは思うけれど。
涼はさらにその上を行く資質を持っているのよ。
人望を集めることができるというのは、それだけでも十分すぎるほどの才能と言えるわ。
どれほど頭が良くても仁にはそれがない。
人に好かれようという気持ちが足りないのよ。
だからこそ涼の名前を聞くたびに、嫌でもその事実を思い知らされてしまう。
(…涼さえいなければ。)
今まで幾度となくそう思ったわ。
だけど、そう思ったところで特別何かをしたことはないつもりよ。
涼を殺せば必然的に仁が国王になるでしょうけれど、そんなことには意味がないわよね?
涼がいなくなったところで仁の実力が変わるわけではないからよ。
私も一人の母だから、仁を世界に名を残す恥さらしなんてしたくはないの。
実力もない者が国王となっても国を滅ぼすだけ。
だから仁には涼を超えてほしいと願い続けているのよ。
悩める母の想い…。
この話はなくても良いのかもしれませんが、
涼との仲が悪くても性格が破綻してるわけじゃないという訴えで入れてみました。




