『封印された地』
《サイド:????》
何だ、これは?
まさかここが恐山なのか?
円環状に並ぶ六詠山を抜けた先にある地獄谷。
魑魅魍魎が蔓延る谷間を突破してたどり着いたのは、光溢れる穏やかな大地だった。
(…どういうことだ?)
幻でも見ているのだろうか?
(…いや、そんなはずはない。)
もしもそうなら何らかの違和感を感じるはずだ。
だが周囲の景色に異変は全く感じられない。
風や匂いなどの感覚も正常に思える。
だからこそ目の前の景色が信じられなかった。
(…こんなことがあり得るのか?)
先程までの激戦は何だったのか?
無数の魍魎に囲まれ、数多の悪鬼に襲われた地獄谷での戦いがまるで嘘のように思えてしまう。
それほどまでに異常な光景が目の前に広がっているのだ。
(…本当にここが恐山なのか?)
瘴気の類は一切感じられない。
それどころか神聖な気配を感じさせる。
(…これではまるで聖域ではないか。)
神殿や社に匹敵するほどの聖なる気が充満しているのだ。
(…鬼の住処と言われた恐山が、だぞ?)
こんなことはあり得ない。
魍魎を操り、人里を襲い、殺戮をもたらす鬼の住処が聖域のはずがないのだ。
(…いや、そもそもそれ以前に、だ。)
地獄谷と直結している恐山がこれほどの神気を放つはずがない。
地獄谷を包み込む六詠山でさえも瘴気が流れ込んでいるのだ。
当然、地獄谷と直結している恐山にも膨大な瘴気が流れ込むはず。
それなのに。
何故か恐山には瘴気が全く存在していない。
まるで二つの地域が断絶しているかのように、正と負がはっきりと分かれているのだ。
…と言うことは?
普通に考えれば答えは一つしか思い浮かばない。
恐山そのものが何らかの結界で守られているのか?
そうとしか思えなかった。
…だが。
もしもそうならさらに異常な事態ということになる。
全方位から流れ込む瘴気を全て防ぐというだけでも神業に近いのに、
山を一つまるごと守るほどの広大な結界となればそれはもう人の所業ではないからだ。
そんなことは国内の陰陽師を全てかき集めても不可能だった。
(…これは予想とは違う意味で問題だな。)
恐山に住まう鬼を制圧するつもりでここまで来たのだが、どうやらそんな安易な話ではないらしい。
(…ひとまず調査をしてみるしかないか。)
ここに鬼がいるのか?
あるいは別の何かがいるのか?
前人未到の恐山の実態を探るために。
4人の仲間達と共に調査を始めることにした。




