小さな鏡
(………。)
不動さんと香澄様。
二人の関係は良く分からないけれど。
ひとまず香澄様と唯をワタ村に送った僕達は、
薬草の採取に向かう二人と別れてから陰陽術の修行のために村の南側に広がる平野に移動することになったんだ。
「まあ、少々遠回りになったが本来の目的を始めようか。」
「はいっ。」
ワタ村に向かう予定はなかった…と言うか、
香澄様と合流する予定さえなかったはずなんだけど。
結果的には僕達のせいで迷惑をかけていたわけだからね。
道中の護衛だけで香澄様が満足してくれるのならこれはこれで良かったのかもしれない。
「あの、でも良かったんですか?」
「ん?何がだ?」
「二人の護衛です。薬草の採取のために村から離れたようですけど…。」
「ああ、そのことか。」
僕の質問の意味を察してくれたのか、
不動さんは小さな鏡を取り出してから僕に見せてくれた。
「これは呪術の一種なのだが、この鏡を通して遠くの景色を見ることが出来る。」
遠くの景色を?
「朝倉には俺の式神を護衛としてつけているからな。何かあればこの鏡が教えてくれるはずだ。」
ああ、なるほど。
何かがある時。
それはつまり香澄様に危険が迫っている時という意味だけど。
どうやら香澄様には不動さんの式神が同行しているようで、鏡の力で式神の位置が特定できるようだった。
「まあ、それほど強力なものではないが、時間稼ぎくらいはできるだろう。いざとなれば救援に向かうのに10分もかからないからな。よほどの問題でも起きない限りはどうにでもなる。」
それこそ悪霊でも現れない限りは、ということだろうね。
実際にどの程度の能力があるのかは分からないけれど、
不動さんの式神ならそうとう強力なものに違いない。
…と言うか、式神か。
僕もまだ実物は見たことがないけれど。
一流の陰陽師になれば式神と呼ばれる特殊な使い魔が召喚できるようになるらしい。
聞いた話によると獣の姿をもって敵を撃退したり、
鳥の姿をもって遠くの景色を眺めたり、
人の姿をもって会話することも出来るそうだ。
(…僕も使えるようになれるかな?)
全く自信はないけれど、
あれば色々と便利だとは思うからね。
いつかは使いこなせるようになりたいと思ってる。
まあ、それは良いんだけど。
ひとまず不動さんのおかげで二人を心配する必要はないようだった。




