八雲と共に
「良し。それじゃあ、手っ取り早く訓練を始めるか。」
「はい!よろしくお願いします。」
「ははっ。そんなに堅苦しくならなくてもいいぞ。俺も敬語なんて使えないしな。」
あー、うん。
なんとなくそんな気はしてたけど、
八雲は話し方にはこだわらない人のようだ。
「えっと、それじゃあ、よろしく…で、良いのかな?」
「ああ、そのほうが話しやすくて良いな。」
(…あははっ。)
本当に八雲は不思議な人だよね。
こうして気兼ねなく話せる人なんて他にはいないんだ。
唯や香澄様は信頼できるけれど、
それでもお互いに気を遣っているのは事実だと思う。
だけどそれが八雲にはない。
ごくごく自然に話が出来るんだ。
(こういうのを友達っていうのかな?)
今までいなかった同世代だからだろうか。
こうして普通に接してくれる八雲がすごく頼もしく思えてしまう。
「それじゃあ、改めてよろしくね。」
「おう!任せてくれ。単純な試合なら兄貴には勝てないが、こういう勝負なら俺の得意分野だからな。」
「そうなのかい?」
「ああ、兄貴は攻撃特化型だから倒すのは難しいが、俺は後方支援型だからな。妨害工作はお手の物だぞ。」
ああ、なるほど。
陰陽師でも色々と違いがあるらしい。
「まあ、親父は万能型な上に式神まで使えるから俺と兄貴が同時に襲い掛かっても一分と持たずに返り討ちになるんだけどなー。あっはっはっは!」
(…うわぁ。)
八雲は楽しそうに笑っているけれど。
二人がかりでも一蹴されてしまうなんて、僕には想像もできない次元でしかない。
「そんなに実力に差があるのかい?」
「差があるなんてもんじゃねえぞ。たぶん、王城にいる陰陽師を総動員しても勝てねえんじゃねえか?」
「そ、そんなに?」
「親父がそう言うんならそうなんじゃないか?まあ、実際に戦ったことがあるわけじゃないからどうかなんて分からねえが、俺としても親父が誰かに負けるなんて想像出来ねえからな。」
………。
初めて不動さんを見た時からすごいと思っていたけれど。
どうやら本当にすごい人だったらしい。
「まあ、今はどうでも良い話だよな。それよりもさっさと訓練を始めようぜ。」
「あ、ああ…うん。そうだね。」
「今回は制限時間があるからな。さすがに3時間だとたいした術式は覚えられないだろうが、頑張れば簡単な術式の2つや3つくらいは覚えられるはずだ。」
(…なるほど。)
「その陰陽術を使って勝負に勝てるかどうか、だね。」
「そういうことだな。」
「うん。分かったよ。」
「良し。それじゃあ、さっそく始めるぞ。」
「よろしく。」
「おう!」
快く引き受けてくれた。
そうして八雲に教わることで、
いよいよ本格的な訓練が始まることになったんだ。




