甘い考え
詳しい話を聞くことが出来ないまま恭子さんが立ち去ったことで、
再び杞憂さんが頭を下げてきた。
「すみません。本当ならもっと早くに恭子の素性を話すべきだったのですが…。」
「鬼の子であることを知りながら保護したということね。」
「え、ええ。」
香澄様の追及に、杞憂様は素直に頷いている。
「鬼の子が鬼であるとは限りませんので…。それに恭子は正しき考えをもって力を悪用しないことを誓ってくれました。私はその言葉を信じて恭子を引き取ったのです。現に恭子はこれまで一度も約束を破ることなく真面目に神宮のために尽くしてくれています。そうすることで母の意思をついで恭子なりに時雨達と戦っているのでしょう。どうかそれだけは信じてやってください。」
「…まあ、いいでしょう。何かしらの事情があるのであれば、これ以上追求するのは止めましょう。」
ええ、そうですね。
甘い考えかもしれないけれど、
ただ鬼の子と言うだけで責めるのは可哀想だ。
実際、恭子さんは何の罪も犯していない。
不動さんとの関係は不明だけれど、
恭子さん自身が敵対の道を選ばない限り不用意に追及するべきではないと思うんだ。
「恭子のことは許してやってください。あまり多くを語る性格ではないもので、少々身勝手な行動をとることがありますが、決して悪気はないのです。」
「いえいえ、彼女のおかげでこの場はしのげたのですから、感謝こそすれ怒る理由なんてありません。」
「ありがとうございます。」
香澄様が和解を選んだことで、
ひとまず恭子さんと杞憂様の疑いは晴れた。
だけど鬼道四聖神との戦いと恭子さんの出生の秘密。
驚くべき展開が立て続けに起きたことで気持ちの整理が追い付かないのは誰もが同じだと思う。
それでも僕達に残されている時間には限りがあるんだ。
ここで迷っている暇はない。
再び不動さんが動き出す前に。
鬼道四聖神が動き出す前に。
そして兄上が戻ってくる前に。
今後の方針を決めるために会議を再開することにした。




