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THE HANGED MAN  作者: SEASONS
プロローグ
10/499

幻夜と八雲

「ひとまず、だ。」


「あ、はい。」


「………。おっと、雑談はここまでだな。」



父上との話を終えたことで不動さんが話を切り出そうとしたんだけど。


少し話し過ぎたのかもしれないね。


すっかり忘れていた問題が起きようとしていたんだ。



「話の続きはもう少しあとにしようか。」



(………。)



不動さんが話を中断した直後に、もっとも恐れていた瞬間が訪れてしまった。



出来ることならこうなる前に撤退しようと考えていたんだけど。


話が長引いてしまったことで母上と兄上が到着してしまったんだ。



それに何故か、母上に手を引かれるように唯もこの場に訪れている。


それも普段以上に着飾っていて、まるでこれからどこかへ出かけるかのような雰囲気さえ漂っているんだ。



「お、お兄様…。」



(…ん?)



唯は何を戸惑っているのだろうか?


何故か僕に助けを求めるかのような視線を向けてくるんだけど、唯が何を困っているのかが分からない。



「ゆ、唯…?」



どうかしたのか聞こうとしたんだけど。


その前に母上が唯を引っ張って不動さんの前へと歩み出てしまった。



「お待たせいたしました。娘の唯でございます。」


「…ふむ。」



母上に紹介されたことで不動さんは唯に視線を向けている。


まるで何かを確認するかのような態度なんだけど。


これは一体、どういうことなんだろうか?



「あ、あの…。母上?」


「あなたは黙っていなさい。」



(………。)



母上に問いかけてみようとしたんだけど。


いつものように睨まれてしまってそれ以上は何も聞けなくなった。



これはどういうことなんだろうか?



状況が理解できない。


どうして唯が挨拶をさせられているんだろうか?


そしてどうして不動さんは唯を観察しているのだろうか?



(…これではまるで。)



まるで別の意味での『挨拶』のような気がしてしまう。



(…って!?まさか!!)



『家族総出での挨拶』



もしもそれがそういう意味だったとしたら?


そしてもしも王家の一員として生まれた唯に課せられた運命だとしたら?



(…この挨拶の本当の意味はっ!)



御神みかみ一族と不動ふどう一族の婚約だったのかもしれない。



(…ま、まさか?…まさか本当に?)



唯の婚約が決まってしまうのだろうか?



(…唯はまだ8歳なのに。)



それでも婚約自体は不可能ではないのかもしれない。


結婚自体は唯が大人になるまで待つとしても、

婚約自体は何歳からでも出来るからだ。



「まさか…?」


「…ふむ。」



本当に唯の結婚相手が決まってしまうのかと考えたところで、

不動さんが一度だけため息を吐いた。



そして僕や父上にだけ聞こえるような小さな声で囁いてきたんだ。



「まあ、わざわざ王族側から挨拶を受けた以上は無下に断るわけにはいかないだろうな。」



(…え?)



「あまりこういったやり方は好ましくないのだが、何事にも巡り合わせというものもあるからな。一度は話を合わせるべきか。」



話を合わせる?



ということは、不動さんとしてはあまり乗り気ではないのだろうか。


だとすれば王族から挨拶を受けたということで断りにくいと考えているのかもしれない。



「まあ、どちらにしても挨拶はさせるつもりでいたのだ。目的はともかくとして、顔合わせはしておくべきだろうな。」



顔合わせ?



まだまだ状況が把握できない。


それでも僕が話を聞く余裕はないまま、

一方的に話が進められようとしている。



幻夜げんや八雲やくも。こちらに来なさい。」


「はい。」


「おう。」



(…え?い、いつの間にっ!?)



今まで全く気付かなかったんだ。


だけど不動さんに呼ばれて近づいてきた二人は僕がここに訪れる前からずっと謁見の間にいたようだった。



「改めて紹介しておこう。こちらが長男の幻夜げんやと次男の八雲やくもだ。」



長男と次男?



ということは、二人とも不動さんの息子さんなのだろうか。



初対面だから何とも言えないけれど、

長男の幻夜さんは僕よりも年上に見える。


だけどはっきりと年の差を感じるというほどではないから3つか4つくらい離れているのかな?


もしかしたら兄上と同世代かもしれない。



見た目からは礼儀正しい雰囲気を感じるんだけど、

どことなく穏やかな気配も感じられる。


こういう人物を冷静沈着と表現するのだろうか。



僕にも兄上にもない不思議な感じがする。



だけどもっと不思議なのは弟の八雲さんだ。


年齢は僕と同じくらいだと思う。


笑顔が良く似合う健康的な人物なんだけど。


こうして王族と対面していても一切物怖じしない豪胆さには尊敬すら感じてしまうんだ。



(…不動さんほどではないけれど、彼も相当な実力者じゃないかな。)



同世代とは思えないほどの才能を感じてしまうんだ。



これが血筋なのだろうか?


不動さんの血を引いているだけあって、

幻夜さんも八雲さんも一線を画していると感じたんだけど。



「…分かるか?これが努力の差というものだ。」



まるで僕の心を見透かしているかのように、

不動さんが僕の迷いに答えてくれていた。




不動八雲ふどうやくも』12歳。


前作では名前は出ませんでしたが、

今作においては重要な人物の一人になります。



不動幻夜ふどうげんや』16歳。


前作では杞憂幻夜きゆうげんやとして登場しましたが、

この時点での性はまだ不動になります。



不動時雨ふどうしぐれ


今作における最重要人物。


八雲と幻夜の父であり、

涼や仁の育ての親でもある。

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