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不思議な力
「お嬢ちゃん,せっかくの親切心を無駄にするとバチが当たるぞ」
神様が言う「バチが当たる」は何となく説得力があるな,と真依子はぼんやりと思う。
「たしかに病気で弱った今の私は,猫の手も借りたい気分ね」
「じゃろ。神様を猫扱いするのはどうかとは思うがのう」
「そんなことどうでもいい。で,あんた何か役に立つの?」
「もちろん。わしにして欲しいことがあれば何でも言っとくれ」
「何でも?」
「ああ。わしは神じゃからな。不思議な力で何でもできるぞ」
「すごい! じゃあ,今すぐ私の風邪を治して!」
「…それは無理じゃ」
「え!? 不思議な力で何でもできるんじゃないの!?」
「いや,一言で風邪と言っても,世の中には何万種類もの風邪のウイルスがあって,それぞれ耐性が違うんじゃ。お嬢ちゃんの体を蝕んでるウイルスを特定せんと,どの不思議の力が効くのか分からん。不思議な力の薬効をウイルスに合わさんと」
「不思議な力のくせに無駄に科学的ね?」