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強がり
真依子は勇気を振り絞りながら,一歩ずつ廃病棟の暗い廊下を進んでいく。踏みしめるたびに軋む床の音にビビりながらも,真依子は強がることを忘れなかった。
「何よ。お化けもゾンビも何もいないじゃない。拍子抜けだね」
真依子の独り言が病院の狭い廊下に反響する。
「何かいるんだったら隠れてないでさっさと出てきなよ。私がお祓いでやっつけてやるから」
真依子の挑発に対して,反応はない。
「ほらね。何もいないじゃん。廃病棟なんてただの空き家じゃない」
そのとき,真依子の右手すぐにあったドアが突然スライドした。
「きゃああああ!」
真依子が声を裏返す。
「あんた何者? さっきからうるさいんだけど。寝ている患者さんもいるから黙って」
ドアの開いた一室にはナース姿の明日香がいた。
「あら,この前の巫女じゃない。そんな大所帯で何しに来たの?」
「え?…大所帯?」
「ええ,あなたの後ろに一人,二人,三人,四人……」
「きゃああああ! お化けー!!」