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不審者
真依子と笠井が総合受付を探して病院内を彷徨っていると,「コスプレ姿」の女性が悲鳴をあげた。
「ふ…不審者!」
さらに叫ぼうとする女性の口を,真依子が慌てて押さえる。
「私たちは不審者じゃない」
「いいえ。格好が明らかに不審者よ」
看護婦は真依子の足元から頭の先までを見渡す。
看護婦の無礼な態度に,真依子は立腹する。
「何!? 巫女服に文句があるの? 自分もコスプレしてるくせに!」
「コスプレ!? ナース服がコスプレ!?」
「違うの? ただ男性の性欲を徒らに刺激せしめるためだけの格好でしょ?」
「そんな言い方しないでよ! 殿方には心の癒しも重要なのよ! 巫女の方こそ,女性に純潔を求める性癖の歪んだ男性に媚びる職業でしょ?」
看護婦のこの不躾な発言には,笠井が黙っていなかった。
「はあ!? あんた,巫女のことを何も分かってない! 巫女は神に仕え,霊と交信する超自然的存在なんだ!」
「笠井さん,その説明やめて! 不審者感が出まくってる!」