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シフト
制服姿の真依子が,社務所にある背の低い机の上にカバンを置く。
そして,カバンから一枚紙を取り出し,息を吹きかけてお茶を冷まそうとしている笠井の目の前に提示した。
「笠井さん,これ,訂正したシフト表」
笠井の目に留まったのは,12月24日の欄だった。
「あれ,真依子さん,クリスマスも入れるようになったんですか?」
「うん。予定が変わってね」
「クリボッチなんですね」
「違うわよ! この日,彼氏が地球を守ってるの。だから,私も頑張って働こうと思ったの」
「彼氏? 地球を守ってる?」
笠井が,この女完全にイカれちまったんだな,と言わんばかりの呆れ顔をする。
「まあ,何はともあれ,真依子さんがクリスマスに来てくれるのはありがたいです。うちの神社ではクリスマスイベントに力を入れてますから」
「ん? 宗派違くない?」
「大丈夫です。偉大なるイエスは,隣人愛の精神ですべてを受け入れてくれます。アーメン」
「そういう問題じゃないと思う」