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8万円のために
万札に釣られた真依子が連れてこられた場所は、真依子の家のすぐそばにある神社だった。
「へえ、神社ってここだったんだ。私、毎年初詣で来るよ」
「今年の初詣で神社に来たあなたを見て、神は一目惚れしたのです。あなたは処女にしてはまあまあ可愛いので」
「その侮辱はもうやめて?」
真依子は右手をパーにして、スーツ姿の男性に差し出す。
「ほら、神社まで来てあげたよ。約束通り8万ちょうだい」
「神社に来るだけで8万円だなんて、そんな美味しい話があると思いますか?」
「あんた、私のこと騙したの?」
「8万円はちゃんとあげます。ただし、あなたが巫女になってくれたら、です」
「巫女コスすればいいのね? いいよ。あんた、巫女が好きだもんね。巫女コスで撮影会してあげる。握手もしてあげる」
「ジュル、いいんですか!? …って、違う違う」
「よだれ出てるよ? サインもしてあげようか?」
「いいんですか!? …って違います! 巫女はアイドルじゃない!」