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心の闇
「ゆーうきくん♡」
「うわっ!?」
結城君が驚くのも無理はない。高校の個室の男子トイレで用を足しているところ,上から真依子が覗き込んできたのだから。
「み…三郷,こ…こんなところにまで出てくるなんて,い…イカれてるぞ」
結城君が大事なところを慌てて隠す。
「こんなところじゃないと,結城君と2人きりになれないからさ。結城君,私の顔を見ると,照れてすぐに逃げちゃうから」
「て…照れてるんじゃない。こ…怖いだけだ」
「私と身を焼き尽くすような激しい恋に落ちてしまうのが怖いのね。その気持ち分かるよ」
「お…お前,サイコパスだろ?」
「お前最高です? ありがとう♡」
「いやいや,言ってない」
「うふふ♡ 結城君,一緒にお弁当食べよう♡」
閉まったドアの上方から個室トイレに入り込もうとする真依子を,結城君は慌てて制止する。
「な…何考えてるんだ!? ここはトイレだぞ?」
「え? トイレってお弁当食べる場所でしょ?」
「心の闇が深過ぎる…」