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リアリスト
「え!? 呪い!? どなた様ですか!?」
社務所から笠井が飛び出してきた。
男性は,人差し指を口元に当てた。
「シーっ。神主さん,あんまり大きな声を出したら姉が起きてしまいます」
「すみません…」
「いえいえ。ちなみに俺の名前は鴨下篤志です。三郷とは同級生です」
「え? そうなの?」
「三郷は便所飯だから同級生の顔と名前を知らないとは思うけど」
「べんじょめしって何?」
真依子は首を傾げた。篤志は知らぬが仏だと思い,話を続けた。
「とにかく,俺の姉である明日香の呪いを,姉が寝ている間に解いてください」
「どうして寝ている間なんですか?」
笠井が当然の疑問を口にする。
「起きたら逃げちゃうんです。姉はリアリストだから,呪いとかそういう,オカルトの類を一切信じていないので」
「え? でも,死んだ人が見えるんだよね?」
「でも,信じてないんだ。俺の姉は,死んだ人のことをみんな,生きていると思ってるんだ」
「マッド・リアリストだね!?」




