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朝の登校風景
「美雨、おはよ!」
「あら、中間テスト当日の朝だというのにやたらと元気ね。何かあったの?」
正門前をツカツカと歩いていた生徒会長は、真依子に対して挨拶ではなく質問を返した。
「実はね、昨日、結城君とデートしたの」
真依子はポッと赤くなった頬を両手で押さえる。
「なるほどね。翻訳すると、試験のプレッシャーに耐えかねたクラス一のバカ女が、ついに現実逃避をして妄想の世界に飛び込んだ、ということね」
「意訳しないで! 昨日、結城君と手繋ぎデートをしたのはまぎれもない事実だから」
「ふーん、だいぶ病んでるのね。……あ、妄想の国の王子様も登校してきたわよ」
美雨が振り返った方向を真依子も振り返ると、そこにはスクールバッグを背負った結城君が立っていた。
「結城君だ!」
「げげっ三郷…」
結城君は真依子から、そして学校からも遠ざかる方向へと走り出した。
「なんで逃げるの!?」
「夢から醒めたかしら? ほら、現実に戻って試験受けるわよ」




