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神の怒り
結城君に似合っていると言われたとはいえ、巫女服で街中を歩くのはさすがに気が引けたので、デートは神社の敷地内ですることにした。
たとえ雑木林の中だって、結城君と手を繋いで歩けるだけで幸せである。
「結城君、楽しいね」
「うん。俺も巫女さ…三郷と一緒に歩けて楽しいよ」
そのとき、真依子は何者かの視線を感じた。この神社で一番大きな木の陰に誰かいる。
「…お嬢ちゃん…」
「下ネタ神!」
大樹から顔半分を覗かせた神様の様子は、典型的なストーカーそのものだった。
「お嬢ちゃん、まさか浮気をしとるんか?」
「いや…その…」
神様から発せられる負のオーラに威圧され、真依子は後ずさりする。
「お嬢ちゃん、神の怒りを買ってもうたな」
「…神の…怒り?」
まさか頭上から雷が落ちてくるということはないだろうか。
「し…下ネタ神、な…何するつもり?」
神様はポケットからスマホを取り出した。
「SNSにお嬢ちゃんの悪口を書き込む」
「みみっちいね?」