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清水の舞台から飛び降りる
清水寺の本堂は真依子と同じ高校の生徒で溢れていた。しばらく視線を泳がせた真依子は、ある男子生徒を見つけ、キャッと声を上げた。
「いた! 結城君だ!」
突然駆け出した真依子を、美雨が慌てて追いかける。
「真依子、待って! 結城君に何するつもり?」
「思い切って告白するんだ!」
「それはダメ!」
「『清水の舞台から飛び降りる』って言うでしょ? 私、ついに決心したの。今から清水の舞台から飛び降りるわ!」
「それはやめて! 誰も得しないから!」
美雨の制止も空しく、真依子はついに結城君の目の前に立った。
「結城君!」
「みみみみ三郷…」
ストーカーの急接近に、結城君は分かりやすくテンパっている。
「結城君、好きです! 一生一緒にいてください! 同じお墓に入ってください♡」
「むむむむ無理だから! うわあああああああ」
結城君は真依子に背を向けると、そのまま背景の緑に向かって駆け出した。
「結城君、待って!! 清水の舞台から飛び降りないで!!」




