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修学旅行の夜
宿泊先は京都市内のホテルだった。幸か不幸か、真依子に用意された二人部屋の同室者は美雨だった。
灯りの消えた部屋で、布団を横に並べた女子高生2人のヒソヒソ声が交わされる。
「ねえ、真依子?」
「何?」
「真依子って結城君のことが好きなんでしょ?」
「え!? どうして知ってるの!?」
「実は結城君から相談を受けてて」
「本当に!? めっちゃドキドキするんだけど…」
「真依子、結城君の下駄箱に手紙を入れたことあるでしょ?」
「あるよ」
「どれくらい?」
「2回」
「1日に?」
「うん。朝刊と夕刊のイメージで、毎日登校時と下校時に読んでもらえればと思って」
「それから真依子、下校時に結城君を尾行してるよね」
「尾行というか、女性は男性の三歩後ろをついていけ、って言うでしょ? いつも三歩後ろから結城君を見守ってるよ」
「割と近接型ね」
「そうかあ。結城君、美雨に恋愛相談してるのかあ」
「ん? 恋愛相談? どう考えてもストーカー被害相談だよね?」