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巫女舞
オンボロの外観とは違い、本殿の中はリフォームが施されて綺麗になっていた。近所にあるとはいえ、本殿に入るのは初めてだったため、真依子は不思議な緊張感に包まれていた。
「さーじぇなあじゃんがーふのげんわおゔぁにー」
正座をした笠井が、同じく正座をした真依子と女性を前にして、よく分からないおまじないを唱えている。これが「祈祷」の正体らしい。
おまじないを唱え終えた笠井は、真依子の方まで歩いてくると、真依子に耳打ちをした。
「真依子様、出番です」
「え? 私もなんかやるの?」
「もちろんです。巫女舞を踊ってください」
「巫女舞? そんなの踊れないよ」
「適当で大丈夫です。さっきの僕のおまじないも適当ですから」
「そうだったの!?」
「はい。祈祷なんて単なる気休めなので、適当にやればいいのです」
「アイドルのオーディション用に練習したダンスでいいかな?」
「もちろん。巫女とアイドルはほぼイコールなので」
「やっぱりそうなんだ…」