2/87
勘違い
「今、あなたは『なります。』と言いましたね? 巫女になることを了承しましたね? これで契約成立ですね」
スーツ姿の男性が握手を求めようと差し出した手を、真依子はヤブ蚊を払うかのように振り払った。
「今のは騙し討ちだからノーカン。てっきりモデルのスカウトだと勘違いしたの。巫女のスカウトってどういうこと?」
「どうしてモデルのスカウトだと勘違いしたのですか?」
「私、オシャレだから」
真依子は真顔でそう言い切った。スーツ姿の男性は、真依子の真顔の下にあるファッションを見て、真顔でこう返した。
「普通にダサいですよ」
「……は?」
真顔が、鬼の形相へと変わる。
「あんた、ファッションのこと分かってないでしょ? 仕方ない。ズブの素人のために解説してあげる。このジャケットは9万円。シャツは2万円。スカートは3万円。靴も3万円。全部ブランドモノものよ」
「まさか、高いもの=オシャレだと思ってるんですか?」
「そうよ」
「ダサっ…」