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豹変
「真依子さん、これ」
笠井は真依子に箒を差し出した。
「まさか私に掃除をさせる気? 無理。私、携帯より重いもの持てない」
「このアマめ…神はどうしてこんな性悪女を選んだんだ?」
「可愛いからでしょ」
「本当にムカつく女ですね? とにかく、神社に来たからには巫女装束に着替えてください。そうしないと婚姻費用払わないですよ」
舌打ちをしながら、真依子は更衣室のある社務所へと消えていった。
「やっぱりこの服ダサいよ…袴を膝上まで切っていい?」
巫女装束に着替えた真依子は、両手で赤い袴を持ち上げながら笠井の前に現れた。
「ん? 笠井さん、ポカンと口開けてどうしたの?」
「…可愛い」
「え?」
「好きです」
「え?」
「僕と結婚してください」
「突然どうしたの? 冗談はいいから早く箒貸して」
「ダメです。真依子様のようなか弱い乙女に掃除なんてさせられません。僕がやります」
巫女装束を着た途端の笠井の変わり身に、真依子は巫女フェチの本性を見た。




