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霊異譚イチャつき絵巻  作者: ヘルニアス洋
都市伝説散歩編
68/101

タクシー

少し長くなりました

 市街地からやや外れた古い宅地の点在する集落を抜けると、隣市との境に峠道があった。左手に墓地を眺める峠道が。


 高齢のドライバーは屋根に菱型の行灯(あんどん)を灯してその道をひた走る。タクシードライバーとして長く無事故無違反が自慢だったが、そろそろ引退を考えるようになった。目でものを追うことが辛くなってきたことからだった。

 それでも隣市でお客を降ろし、ホームタウンへ慎重に戻る。あと三十分も走れば着くだろう。そうなれば今日はもう上がってもいいはずだ、そんな深夜二時。


「ああ、ここら辺か……」


 不意に口をつく。

 時間を問わず、この道は好んで通りたくはなかった。ここはかつて同僚が事故を起こし、その命を落とした場所。

 事故原因は操作ミスと片付けられたが定かではない。この高齢ドライバーは事故原因を疑っていた。

 それは最後に同僚の声を聞いたから。無線で何かを喚いていた声を聞いたから。

 叫んでいた中身はよく解らなかった。ひどく慌てていたためだ。事故を起こしてからの無線連絡ではなかった。明らかに何かがあって、無線を使い、事故に遭っている。

 だから疑っていたし、この道を避けたくもなっていた。


「一体、何を見たんだろうな……」


 墓地を通り過ぎる際、白い人影が淡く見えたような気がした。しかし気に留めることはない。お金を払ってくれるお客様でなければ木立と同じ。

 長くこの商売をやっていればそれくらいでは動じなくなるというもの。



 深夜のタクシー、それは心霊ネタの宝庫。


■ ■


 物部一門の新鋭、新家(にいけ)十千(とち)は仏頂面で腕組みをしていた。

 ここはとある事務所。長テーブルとパイプ椅子、そしてホワイトボードがあるだけの簡易会議室だった。

 イスに腰掛けているのは厚めの資料を前に唸っている中年男と部下らしき女。十千は壁に寄りかかるように立ち、対面していた。仏頂面で。


――上はなんだってこんなシケた仕事を受けるのよ!


 内心毒づくが顔にはありありと出ている。眉間を寄せてただでさえキツい目つきを更に強め、器量良しを台無しにしていた。苛立ちからサイドで纏めた髪も小刻みに揺れる。


「何とか受けてもらえませんかね?」


 中年男が絞り出すような声で問う。肥満のせいで気道が狭まっているだけではない。不機嫌を隠さない小娘に頭を下げなければならないちっぽけなプライドから、忌々しさが声ににじみ出ていた。名刺の肩書には制作部長とあったか。


「是非、お願いします!」


 部下女も頭を下げてくる。こちらは十千が発する怒気に萎縮気味。

 そもそも十千の言うシケた仕事とは、テレビ番組の企画で心霊スポットを売り出し中のアイドルが突撃するという安直なもの。事案発生したわけでもないのに物部の霊媒師が派遣されるというのが異例だ。

 何でもアイドルの所属事務所が本物を護衛に付けなければ出演を承諾しないという徹底を見せたらしい。大袈裟なことである。

 物部一門の存在も軽くなったものだ。意気軒昂な十千がふてくされるのもうなずける。


「はぁーー。了解よ、了解。そのアイドルとやらのお守りをすればいいんでしょ」


「おおっ、良かった」


「ありがとうございます」


 制作会社には大口スポンサーの意向が絶大だった。特に今回は出演アイドルの指名圧しがかなり強く、この企画が倒れるとテレビ局から契約を切られると脅されていたらしい。

 そんなことは若手霊媒師にはどうでもいいことだったが、元より十千に拒否権はない。それはあの執事からの発令だったのだから。

 されどもっと貫禄のある人選もあったはずである。見た目それっぽいのは信頼性にも繋がる――実力は別にしても、だ。

 そこへ俊英とは言えうら若い十千に役が振られた。実際、制作部長はこんな娘が、と端から馬鹿にしていたほど。口に出していればその身がどうなっていたか――そこに分別があって良かった。

 もっとも十千が選ばれた理由はテレビ映りも考え、見目良いからだけであり、当人は知らされていない。こちらも大人の裁量で何より。


 霊媒師としてテレビに出るのは物部としてどうかと思われるのだが。


 十千は諦観たっぷりの息を吐いたのだった。


■ ■


 斯くして撮影当日、一時間ほどで日付を跨ごうかという時刻。スタッフ、キャストと新家の麒麟児と謳われた霊媒師が顔合わせをしていた。

 案の定スタッフ陣は女子大生くらいにしか見えない十千にいい顔をしない。動きやすいジャケットとパンツスタイルにアイドル級ルックスでは頼れる霊能者にはとても見えないのだから。


「……よろしく」


「こちらこそよろしくお願いします。今回は東浦さんではないんですね?」


 紹介されても無愛想を通していた十千は、逆に愛想よく握手を求めてきたマネージャーを名乗る女を凝視した。


――東浦って……フツシの若様の苗字? この女、若様を知ってるの?


 否が応でもピンクに染まるバカップルを思い出す。それだけで砂糖を吐き出す気分になるというもの。

 十千はバリキャリを装うマネージャーを上から下まで遠慮なく睨めつけた。


「あ、ごめんなさい。以前、依頼した時に知り合ったものですから、つい」


 確かに失礼なもの言いである。自分でそれと気づいた坂下美鶴は頭を下げる。見た目と実力は無関係と知っているから、そこに抵抗はない。まして本職をゴリ押しした張本人でもあった。

 周りに聞かれないよう小声で補足する。


「物部の方と存じています。そして実力に間違いがないことも」


「ふん……まあ、いいわ」


 マネージャーの背に隠れていた今回のメインと目が合う。

 緊張しているのか、起伏に乏しい体を自身で抱きしめるように立っていた。アイドルにしては凛々しい顔立ちで人気があるという。

 名を奥原さつき。

 今回はその凛々しさを崩してやろうという企画の意図が見え見えだ。


「アテにしていいのよね? 頼むわよ、ホント」


 このクール系アイドルは怪談や心霊動画がだいっきらいなのだ。微かに覗く涙目が庇護欲をそそる。十千はこの仕事とも言えぬ仕事に唯一の感触を得ることに。


「心配しないで。あたしはこれでも一門最強の霊媒師よ」


 安心させるように肩を叩き言い放つと、青ざめていたさつきの頬に赤みが戻る。

 任せて心配はない。それは間違いないのだが、十千の言にはひとつ嘘があった。最強どころか、物部一門高位霊媒師のシングルランカーにさえ届いていないという点だ。

 こんなところで(うそぶ)くくらいいいわよね、といった軽いノリ。いずれはなってみせるという気概もある。


 蛇足ながら、長田真一郎は近頃三本の指に数えられそうだともっぱらの噂。次期総領が聞いたのなら即座に鼻で笑うだろうが、五指は間違いないと執事の太鼓判が押されているという。



 近頃噂に上る心霊スポット、それが今回の撮影場所だった。

 地方都市の外縁にある集落を抜けたところ続く険しくない峠道。その途中にある墓地周辺にこれから向かう。


「そこはですね、数年前にタクシーが事故を起こした場所なんですよ」


「まさか、死亡事故?」


 アイドルさつきの声が震えてくる。心霊云々は別にしても実際に人が亡くなった場所には好んで近づきたいとは思わない。遺族等には申し訳なく思うが、それがさつきの率直なところだった。

 ただでさえ行きたくない話題あふれる夜の墓地、加えて事故の実績まであると聞かされれば、帰りたくてしょうがない。


 片や似た年頃の十千と言えば――


――やれやれね……墓地にタクシーなんて、ありきたりもいいとこじゃない。


 これで乗せた女性を目的地まで送って行ったらいつの間にか姿が消え、座っていたはずのシートはしとどに濡れていた――までいくと完璧である。


 本職にとっては風聞に咲くものほど枯れ尾花でしかないと知っている。よしんば地縛霊等による霊障があったところで十千が手を焼くはずもなく。

 だから一欠片の憂いもなく話を聞き流していた。

 心霊現象もその背景もどうでもよかった。思うところはひたすらこの退屈なお守りが早く終わればいいとだけ。


 それでも現着する前から怯えきっている少女が不憫で手を握ってあげるあたりに十千の人柄が滲む。

 拾ってもらった子犬のような眼差しにぐっときたのは否めない。流石は人を惹きつけるアイドルか。


「もっとしゃんとしてないと、ファンががっかりするよ」


「はい……お願いします。離れないでくださいね」


 十千の励ましに落ち着きを取り戻し気味になっていたさつきだったが、番組は大いに怖がる様を望む。

 仲睦まじい姉妹のような二人を眺め、敏腕風マネージャーは企画の行く末に一抹の不安を覚えるのだった。


 そして一行は現地に向かう。


「先輩、大丈夫っすか?」


「何がだよ?」


 先行するスタッフだけが乗るロケ車内で、ハンドルを握るADの桑村が横に座るディレクターの岡田に問う。


「さつきちゃん、びびり過ぎっすよ。泣き顔ならいいんすけど、喚き散らしがひどいと画にならんくなりません?」


 言ってることに比べ表情は明るい。


「大袈裟なくらいでいいんだよ。視聴者様もお化けなんかより、アイドルがひどい目に遭うとこが見たいんだから」


 太めの岡田が甘口の缶コーヒーをすする。いやらしく目尻を下げながら。


「悪い顔になってんじゃないの? ディレクター」


 後部座席に控える二人のカメラマンのうち坊主頭の方が加わる。


「そうかい?」


 窮屈そうに後ろへ悪い顔を見せる。

 それを見て、長髪のカメラマンがくくっと笑いながら――


「仕込みは?」


「上々――いやいや、保険だよ、あくまで保険」


 後続の女性陣が乗るワンボックスカーをよそに、ロケ車は賑々しく道を進む。



 やや強めに車を走らせ、予定の時刻に件の墓地へと一行は到着した。


「……ここ?」


 さつきは十千の裾を掴んだままだった。


「大丈夫よ。何もいない。心配しないで。怖がってると有りもしないものを見つけることになるんだから。しっかり正面向いてやればいいんだって」


 十千はさつきの肩を抱いて励ます。

 その言い様を聞いて美鶴は感心してしまう。有りもしないものが見えてしまうという言葉がすんなりと腹に落ちるのだ。


「ここなんですが、墓場の中に幽霊が出るというのはあまり聞きません」


 ディレクターがカメラに映らない立ち位置で説明を始めるようだ。陰の声による解説スタイルでいつの間にかの撮影開始。まだ二台撮影はしないのか、長髪のほうは照明を翳している。

 怯えるアイドルと美人霊能者――ディレクター岡田はそのカメラ映りにご満悦で進行していく。


「ですが、数年前に一件の交通事故がありました。タクシーの単独事故です。乗客はいませんでしたが、残念なことに運転手はお亡くなりになってしまいました。それからです。ここを無人のタクシーが走り抜けるという噂が出始めるのは……」


 嘘かほんとか、試しにそのタクシーに手を上げてみると、霞のように消えてしまったという。


 明らかに眉唾ものである。撮影側に信じているような空気がない。

 しかし深夜の墓地というシチュエーションがアイドルの不安を煽る。


「すぐさま噂のタクシーが現れるとも思えませんので、少し墓場の中を歩いてみましょうか」


 ディレクターの提案にさつきの体は強張る一方だ。


――バカバカしい。そんなタクシーいるわけないでしょ。見たってやつ連れてきなさいよ! だいたい墓地に幽霊出ないって言ったのあんたじゃない。そんなとこ歩かせてどうすんのよ!


 十千のイライラが募る。しかしそれが演出というもの。既にクール系が見る陰もない状態のさつきが可哀想になってきた。


「ちょっと待ってね……祓いし清浄これに!」


 柏手を打つ。

 その場にいる全員が空気が動いたと錯覚した。風が吹いたのとは違う空気が変わった気配を感じたのだ。

 深夜の墓地にいるはずなのに、朝日満ちる神社の境内にいるかのような。


「さすがね」


 カメラの後方から見守っていた美鶴から小声がこぼれる。


「さ、行きましょうか」


 そう言う十千の手を握り、さつきは何度も肯き返す。


「マジもん……?」


 スタッフ一同をAD桑村が代弁した。



 照明を落とし、手を繋ぐ二人を正面から撮る坊主頭のカメラマンは後ろ歩きを気遣いながら思った。


――これ、もうダメじゃね?


 何しろ泣き顔をを狙っていたはずのアイドルが朗らかに霊能者とおしゃべりしているのだ。心霊番組としては致命的である。

 これではディレクターの仕込みに賭けるしかなくなってしまうではないか。カメラマンとしては出来る限り自然な画を撮りたいと思ってしまう。

 最前までとは矛盾している自身には気づいていなかったが、職人魂らしきものは残っていたようであった。


 面白くないのは岡田も同様である。

 女霊能者が時折あさっての方向に向けて手を払っているのが更に気に食わない。聞けば雑多な霊を追い払っているという。


――だったらカメラで撮らせてくれよ! っていうか、ほんとにいるのかよ!


 それは確かにもっともだった。十千には協力する気がさらさらないのが見て取れるから憎たらしい。苦虫を噛んだらこんな味なのかとさえ思う。

 この女の前では仕込みも役に立たないのではないかと、気が気でなくなりそうだ。

 ボツの二文字が頭を過ぎる。


 何の因果か幸運か、遠くから車のライトが見える。目を凝らすと屋根にも光源があるではないか。それはタクシーに違いない。


「さつきちゃん、向こうからタクシーが来てるよ。道路に出て手を上げて!」


 仕込みの段取りにはなかったが、これは起死回生のチャンス。岡田の意気が上がる。



「もうちょっと下がらないと危ないよ」


 十千が手を引く。さつきが車線を塞ごうかという勢いで手を振っているのだ。


「止まってくれるかな?」


「怖くなくなったの? あれが噂のやつかもしれないのに?」


「もう平気です」


 さつきの自信は十千がいればこそ。

 間もなく二人は車のライトに照らされる。


 そしてタクシーは目の前で止まるのだった。


「ちょっとあんたたち、危ないだろ!」


 運転手が窓から顔を出し怒鳴る。当たり前だ。見ればずいぶんと年配のようだ。


「ごめんなさい。噂の幽霊タクシーかと思って……」


 若い娘が殊勝に謝る姿に運転手のトーンも下がり気味。


「幽霊タクシー? そんなもんあるわけないでしょ!」


「ですよねー」


「テレビ?」


 どう見ても撮影スタッフの面々を一瞥し、運転手は嘆息する。


――物好きなことだ。


 そんなやり取りの最中、後部座席から乗客だろう若い男が降りてくる。


「幽霊タクシーって何ですか?」


「あ、ごめんなさい。お客さんいるのに止めちゃって」


 頭を下げるさつきを他所に、十千は降りてきた男に釘付けになる。


――え? まさか……他人の空似? いやいや何でここに?


 脳内でぐるぐる思考が踊る十千に決定的な言葉が後ろから飛んでくる。


「東浦さん!」


「やっぱり若様?」


 もう一人知っているはずの人物がここにいる。美鶴の頓狂な声が後押ししてしまう。


「誰だ?」


 途端に不機嫌になる若い男――舜治が訝しむ。


「どうしました? 舜治……早く帰りましょう」


 長い髪で面貌が隠れるような女も降りてきた。もちろんお千香である。

 確定した。

 そして何故ここでフツシの若様が出てくるのか。十千は内心唸った。

 信用されずに霊媒最強を遣わしたのか、と。

 いや、幽霊タクシーはなんぞやと言っていた。確か飛縁魔である女も帰ろうと言っていた――単なる偶然なのか。


 そして十千を除くその場にいる全員が事態を飲み込めずに呆けていた。


「あー、いや、俺は関係ないな。よし、ほらお千香、帰ろう帰ろう」


「え、あ、はい。いいんですか?」


「いいのいいの」


 いち早く我に返った舜治が静寂を打ち破り、タクシーに乗り込む。物部の人間がいることが判明しているからには関わってはいけない。厄介事は御免とばかりに行動は速かった。


「東浦さん! また春日まどかとお邪魔しますね!」


 美鶴はこういうタイプ。僅かな縁でも絡め取り、ものにする。


 タクシーは逃げるように全てを置き去りにしていった。


「えーと、坂下チャン、今の誰??」


 当然の疑問を口にするディレクター岡田。既にこの撮影は失敗と諦めはついている。それでも聞きたいことは山とあるだろう。


「あー、以前現場でご一緒した方ですね……うちの春日がお世話になったものでして……」


「春日まどか……」


 美鶴はこの回答で精一杯。迂闊に口を滑らせると物部の禁に触れる。それは物理的な排斥が予想される。

 それは十千も危惧し、美鶴の応えに概ね安堵できるところ。だったら後はもう――


「坂下さんでしたっけ……今日はこれ以上無理と思いませんか?」



 女性陣が乗り込んだワンボックスカーを見送る形となったスタッフ陣。


「……撤収しますか?」


「……そうだな」


「撮り直しは厳しいっすよね」


「無理に決まってんだろ。制作部長になんて言やいいんだ……」


 番組が成り立たないこと明白であり、まるでお通夜のような空気に包まれる。ロケ車に向かう足も重い。

 気を取り直すつもりでスライドドアを勢いつけて開ける長髪カメラマン。


「うわぁーー!」


 盛大な叫び声を上げて尻もちをつく。手にある商売道具を放りだしてしまうほどの慌てっぷりだ。


「何だ?」


「どうした?」


 駆け寄る周りは長髪が震えて指差す車内を見る。そして一同は見た。


 座席に座る長い髪の女を。

 全体的に白っぽいその女がこちらを向き、髪に隠れかろうじて覗く口元がいやらしく笑うところを。


 全身を怖気が襲う。


■ ■


「お客さんには迷惑かけてしまいましたね。申し訳ありません」


「いえ、運転手さんのせいではありませんから」


 高齢タクシードライバーと舜治はルームミラーで目を合わせた。

 お千香とふたり、隣市での用を済ませた帰り道、ちょっとしたハプニングの後だった。あれからタクシーは順調に走る。


「向こうは知っているようでしたけど、お知り合いですか?」


「お千香……忘れたのか。何とかって女優さんのマネージャーだったろ」


 一緒に七輪を囲んだ仲だったのにお千香も酷いが、女優の名前を憶えていない舜治も大概である。当然マネージャーの名前も出てこない。

 しかし問題は別にある。

 もう一人の若い女は舜治のことを若様と呼んだ。紛れもなく物部の人間だ。会ったことはない。

 物部が出張るほどの邪気や霊気はなかったはずだ。


「あんなとこで何やってたんだ……?」


 聞くではなしに口に出る。

 拾ったのは運転手。


「前にあそこでタクシーが一台事故ってしまいましてね……まあ、私の同僚だったんですが。それ以来、おかしな噂が広まってしまって、面白半分にあそこへ出向く輩がいるんですよね」


「それが幽霊タクシーですか?」


「ええ……何かしらあいつも無念と思うことがあったんですかねぇ……それにしても、一体何を見たのやら」


 運転手が小刻みに首を振る。前方不注意には気をつけてほしい。


「事故原因になるようなことが?」


「いえね……あいつ、事故る直前に無線で言ったんですよ」


 意味有りげに何拍か置いて――



「出たぁーーーーっ!」

一話完結編はここまでです。

いつもの二人が全く活躍しない話は如何でしたでしょうか。

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