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備前宰相の猫  作者: 山田忍
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猫と佩刀

 宴の翌日、

「上様、オレらに何の用だろ?」

 上様に呼び出され、オレ達は大坂城に向かった。

「褒美があると言っていた」

「褒美‼ お菓子かな⁉」

「それはわからない。行ってみての楽しみだろう」

 大坂城表御殿御対面所にて、

「父上、参りました」

「来ました!」

 中には、上様と北政所様と小一郎のおっちゃんと孫七郎さんが居た。

「猫! 八郎! さっそく褒美じゃ! 受け取れ!」

 目の前には、二本の短刀があった。

「刀⁉」

「短刀……」

「そうじゃ! 短刀じゃ! これをお主らにやる!」

「刀かー!」

 八郎が刀を抜くと、

「‼ こ、これは⁉」

 刀を見て驚いている。

「名刀じゃろう。名はまだないが、それはお主らで付けるとよい」

「うーん。何にしよう?」

「ですが……これは……」

「いいじゃないか。受け取るんだ」

「——わかりました」

「ありがとう! 上様! ——でも」

 孫七郎さんが泣いている。

「——やっぱり、やめましょうか?」

「……いや……やめなくていい……。猫達が持ってきた刀は、小烏丸(こがらすまる)や、小狐丸(こぎつねまる)や、今剣(いまのつるぎ)だ。全て名刀だ。それが見られただけでも嬉しい」

「じゃ! 遠慮なく!」

 こうして、褒美をもらったオレたちは、宇喜多屋敷に戻った。

「猫丸……」

「どしたん? 八郎?」

 刀を見ている八郎は深刻な表情になっている。

「この刀だが」

「この刀がどしたん?」

「この刀は……三日月宗近だ」

「ええっ⁉」

「短刀だが反っているから、おかしいと思っていたが、そして見るのだ。この刃文を」

「刃文?」

 刃を見るが、わからない。

「これは、打ちのけと言い、この三日月状の模様を見て三日月宗近だと確信した」

「……どうしよう」

 持ってると、ヤバいよね。

「まあ、猫丸。この短刀に、お主の好きな名前を付けるのだ」

「好きな名前……思いつかない」

「では、私が付けようか? 猫丸と」

「……刀まで」

「不服か? ならば——」

「猫丸でいいよ。八郎」

「そうか! では、猫丸は二振りとも、お主が持つのだ」

「え? オレが?」

「ああ、猫丸も刀がいるだろう。いつまでも、木刀のままでは、いられないだろう」

「……わかった。持つよ」

 こうして、三日月宗近改め、猫丸を佩刀した。

 だが、オレには気になる事があるので、エリンギに聞いてみた。

「エリンギ、あのイルカ型の乗り物、タイムマシンって言ってたけど?」

「タイムマシンだ、子供用のな。恐らく、どっかのアホが金に困って売ったのだろうが」

「じゃあ、あいつらは——」

「バカ猫、落ち着け。あいつらは、お前に近い時代の人間だ」

「なんで、わかるんだ?」

「あいつらは、俺が喋ったのを見て驚いたからだ。俺達の時代では動物が喋るのは当たり前だからだ。例えば如月みたいに」

「あっ‼ そうか‼」

「バカ猫、教えてやる。あいつらはただの盗人だが、俺達の時代にはダークヒーローって言われている奴らがいる」

「ダークヒーロー?」

「ダークヒーローと言うのは、単純に言えば、歴史を書き換える未来人の事だ」

「れ、歴史を⁉」

「そうだ。良くも悪くも歴史を書き換える者をダークヒーローと言う」

「れ、歴史を⁉ いいのか⁉」

「本来は良くない事だが、歴史を書き換えても、過去に介入した時点でパラレルワールドのごとく、違う歴史になり、本来の時と違う時流が増えるだけで、本来の過去に影響がないから、皆、お遊びで歴史に介入して、好き勝手しているのだ」

「なんか、ヤバくね?」

「バカ猫、お前がこの時代に来た時点で違う時流が出来ているのだ。それを言えば、お前もダークヒーローになっているのだ」

「ええええええっ‼」

「そして、そのダークヒーローの始まりでもあり、カリスマであるのが『ニコ』と言う奴だ」

「なあ、そもそも何でダークヒーローって、言われるんだ⁉」

「それは……また後日にしよう。その時には、もっと大事な事を教えよう」

「大事な事って、なんだよ⁉」

「猫丸、どうかしたのか?」

「八郎」

「何か、大事な事とかあるのか?」

「いや! なにも」

 言えないよな。

「猫丸、私からも大事な事がある。今から支度するぞ」

「支度って……?」

「今から堺に行く。父上の命令だ」

「う、上様の⁉ いきなり⁉」

「そうだ。門の前で石田殿が待っている。急いで支度しないと、怒るかもしれないぞ」

「怒るかもしれないって……怒るだろ‼」

「では、準備するぞ」

 石田殿に怒られない様に急いで準備した。

 門に行くと、

「遅くなりました!」

「すまない。石田殿」

「宇喜多殿、余り待たさないでください。——そして、遅いぞ‼ 馬鹿猫」

 八郎には普通に、オレには厳しく、石田殿はしかった。

「すいませ~ん……」

「そして、猫。猫の準備は長いのは当然か」

 そして、エリンギには優しく言った。

「いや、長くないっすよ」

「ならば‼ 全て馬鹿猫が悪いのだろう‼」

「そんな……」

「石田殿。今から堺にとは、堺で何か起きたのですか?」

「ああ、その事か。堺に着いたら説明しよう」

「そうですか」

「堺で、堺政所が待っているのだ。堺政所と合流してからでもいいだろう」

「あれ? 石田殿が堺政所じゃ?」

「堺政所は私ともう一人いる。もう一人から聞いた方がいいだろう」

 オレたちで堺に行った。

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