奥御殿と某所にて
宴の後、大坂城奥御殿にて、
「来たか。誰もいないな」
午前零時だというのに、正室のねねと藤原秀吉以外の男が二人いる。
「小一郎、孫七郎、今回は特別じゃ。うぬらも中に入れる事にした」
「ああ、あの事で」
「あれか」
「そうじゃ、三日月宗近じゃ」
目の前には折れたままの三日月宗近がある。
「他の刀はまだしも、この刀はまずいよね」
「俺らでごまかしたが、作り直しても、見る者が見れば、すぐにばれるぞ」
「では、どうします。急いで同じ物を作らせて、何とか誤魔化しましたけど、三日月宗近を残したままだと、いつかは気付かれ、二人が罵られますよ」
「ふむ……」
藤原秀吉は少し考え込み、ある事を思いついた。
「三日月宗近は——」
「じゃあ! それ‼ 俺——」
「いや、猫と八郎にじゃ!」
「……」
奥御殿の会話と同じ頃、某所、
「ぎゃああああああ!」
「ぐあああああ‼」
「た、助けて……」
血に染まった布を纏った人物が立っていて、三人組の奇抜な衣装の男達が襲われている。
二人は息をせず、その内の一人が、へたり込み逃げ出そうとしている。
「う、うわあああああああ!」
血に染まった布を纏った人物がよそ見をした隙に、男は逃げ出したが、
「!」
「ぎゃああっ!」
逃げた男の右腕を切り落とした。血が流れもんどりうっていると、
「ひ、ひいいいいい——ぐああっ!」
左目を刺しても、殺す手は止めず、
「ぎゃああああああああああああああ‼」
そして、胸と腹を刺され絶命した。
血に染まった布を纏った人物の足元には、三人の同じ殺され方をした遺体があった。
その後、血に染まった布を纏った人物は左手で、切り落とした右腕を拾った。
「殺す…………絶対に…………殺す…………」