猫と男女
「「「⁉」」」
「ちょっと! なに盗もうとしているのよ!」
「返してもらうぞ!」
オレたちぐらいの男女二人組が現れた。その二人組が着ている服は、誰がどう見ても、この時代の服ではない。
「誰だ⁉」
「誰って……私はメイクイーン、三日月宗近を手に入れるため、この時代に来たの」
メイクイーンはホットパンツを履いて、仮面をしている。
「僕は男爵、お嬢様の従順な下僕、お嬢様の為、三日月宗近を手に入れるのだ」
男爵は、男爵と言う名だが、マスクをしてTシャツとジーンズのラフな服装だ。
「何で、三日月宗近が欲しいんだ?」
エリンギが話すと、
「ね、猫が喋ったわ⁉」
「本当だ‼ 喋った‼」
二人とも、驚いて腰を抜かしそうな雰囲気だ。
「ふん」
「と、とは言え、目的は三日月宗近を手に入れる事よ!」
「三日月宗近は、お嬢様が欲しがっていた物、私はお嬢様の為に手に入れるのです!」
八郎は呆れながら、抜刀し、構えた。
「……今返せば、お主らの罪を許してもいいのだが?」
「えー⁉ 私は三日月宗近が欲しいのよ‼」
「なんで、欲しいんだ?」
「本物の刀剣が欲しいから、過去に来て手に入れるのよ!」
「ちなみに、消失した刀も高く売れるので、手に入れているだけです」
「⁉ なっ⁉」
「過去? 消失? 何の事だ。とにかく、三日月宗近を返してもらおう。あれは父上と母上が大切にしている太刀だ」
「渡さないわよ!」
メイクイーンが鞭を振るった! が、八郎は瞬時に避け、刀で斬りつけようとすると、
「きゃあ! 何するのよ!」
男爵が八郎の刀を棒で止め、反撃するが、余裕で避ける。
「くっ!」
「中々やるな。だが!」
「⁉」
八郎が男爵の持っている棒を弾き飛ばすと、
「とろいわね!」
「申し訳ありません。——お嬢様! お下がりください!」
「⁉」
男爵が煙玉を投げた。オレたちがゴホゴホ言っていると、あの二人はイルカの乗り物まで逃げようとしている。
「⁉ 猫丸‼ 三日月宗近が盗まれている!」
オレの手には鞘だけがあり、三日月宗近は男爵が持って逃げている。
「させるかぁ!」
背中を見せて逃げている男爵の頭を木刀で叩くと、
「ぎゃあ!」
「「あっ!」」
男爵が持っていた三日月宗近は手を離れ、クルクルと空を飛び、岩に刺さった。
「きゅう」
男爵を気絶させたが、メイクイーンは気にせず逃げている。
「やば!」
「あっ‼ 待て‼」
メイクイーンは逃げているが、急に動きが止まり、
「ちょっと……何で、動かないのよ……」
「よし!」
なぜか動かない間に、縄で縛って捕まえた。
それから、
「くう」
「ちょっと、放して!」
バタバタと暴れるメイクイーンと気絶したままの男爵を捕まえた。
「捕まえたぞ」
「やったな。八郎」
「ふん」
「どうしたんだ? エリンギ?」
エリンギは不機嫌だが、八郎は、
「お主らは、この太刀を奪う時に侍女を傷つけた。父上から相応の待遇を受けなくてはならない」
「なに? ご馳走でも用意してくれるの?」
メイクイーンは嬉しそうだが、八郎の目には、怒りが込められている。
「何故そうなる? お主らは支柱引き回しの後、打ち首だ」
「そんな! 酷い……」
「酷くはない。当然だ」
「そ、それは酷い!」
男爵は目を覚まし、驚いている。
「さあ、行くぞ」
「待ってくれ!」
「猫丸? どうした?」
「この乗り物は何だ? どうしてお前たちが持っているんだ?」
「これ? これはタイムマシンよ」
やっぱりそうなんだ‼
「どうして手に入れたのかって、前、変な押し売りが来て、売りに来たのよ。『このタイムマシンを一億で買ってくれ』と、値切った結果一万円にして、実際に使ってみると本物だったから、刀を集めているだけよ」
「たいむましん? 猫丸、たいむましんと——」
「さあ! 逃げますよ!」
いつの間にか、男爵の縄は外れていて、また煙玉を使った。
「ゴホゴホ……」
「くそ!」
「ふぎゃあ!」
煙が無くなると、あの二人とタイムマシンは無くなっていた。幸い、三日月宗近と持ってきた刀は無事だったが、
「取り逃がしてしまったな」
二人はいなくなり、静かになった。
「…………ごめん。オレのせいで」
「気にするな。お主が言わなくても、逃げた可能性もある」
「……」
「それより、猫丸どうする? 三日月宗近は岩に刺さったままだぞ」
「あっ‼」
そうだ! 三日月宗近は岩に刺さったままなんだ!
「そうだよな! 抜かないと‼」
オレが抜こうとすると……抜けない。
「猫丸! 私も力を貸すぞ‼」
八郎と一緒に抜く事になった。すると、
バキンッ‼
「「わあっ!」」
倒れたオレと八郎が起き上がり見ると、三日月宗近は……。