猫と雪合戦
いつの間にか正月になり、大坂の町も正月ムード一色だ。
家の近くには門松があり、外では羽子板や独楽などで子供たちが遊んでいて、現代よりも正月らしい正月だ。
本来なら正月はのんびり……ではなく、八郎は八郎で上様に挨拶に行ったり八郎の家臣の挨拶の応対をしたりなど、正月は正月で忙しい。
そんな正月も終わったある日、外を見ると大雪が降っている。
「すげー雪だな!」
「猫丸は雪が珍しいのか?」
「ああ‼ オレのところじゃ雪はほとんど降らないからな!」
「そうか。積もるといいな」
「そうだな!」
そして翌日、
「おわー!」
雪は止み、一面は銀世界になっている!
「猫丸、雪が積もったな」
「ああ!」
「これから、大坂城に行かないか。お豪と一緒に雪遊びをしようと思うのだが」
「行く!」
「ふにゃあ!」
大坂城にて、
「お兄様、猫様、えり、お豪と雪遊びしましょう!」
冬の準備は万全のお豪ちゃんが笑顔で迎えてくれた。
「そのつもりだ。お豪」
「なにして遊ぶ?」
「猫様は、何して遊びます?」
「そうだなー。雪合戦とか?」
「雪合戦! お豪も一度してみたいでする!」
「よし、じゃあ、するぞ!」
オレ対八郎対お豪ちゃんで雪合戦で勝負になった。
ちなみにエリンギはのんびり観戦をしている。
「行くぞ!」
八郎にぶつけたら、八郎の顔に当たった。
「やったな!」
「うおっ!」
オレも顔に当たった。
「お豪も!」
またしてもオレの顔に当たった。
「もう一回‼」
八郎に雪玉を当てた。
「わあ!」
もう一度、顔面に当てた。
そんなこんなで雪合戦を楽しんでいると、
「おおっ! 雪合戦か?」
「俺達も混ぜてくれよ」
顔を赤らめた虎之助さんと左衛門さんがやって来た。
「虎之助さん! 左衛門さん! 八郎、お豪ちゃん、どうする?」
「いいでする!」
「人は多い方がいい」
「よっしゃ!」
こうして、虎之助さんと左衛門さんも加わった。
「行くぜ!」
「そらっ!」
虎之助さんと左衛門さんの玉はすごい速さだ。その速さゆえに、
「うわっ!」
「いてっ!」
オレと八郎に当たった。しかも結構痛い。
「やったな! そら!」
「行くぞ!」
八郎と二人で雪玉を投げるが、
「おっと!」
「まだまだだな!」
あっさりよ避けられる。だが、それでもオレは避けながら攻撃した。
「今度はこっちか——ん?」
「お、おい! 虎之助⁉」
虎之助さんは、オレたちとは反対の方向に投げた。その先には……。
「ん? 何や⁉」
「や、やっぱり……」
弥九郎さんがいた。弥九郎さんは当然、雪玉をレイピアで弾いた。
——ん? 弾いた?
「何やこれ⁉ 石やないか⁉」
割れた雪玉から石が出て来た。
「ああ、悪い。石が混ざってたみたいだな」
「……これは雪合戦なん?」
「あ、はい。そうです」
「儂も後で参加するわ」
そう言って、弥九郎さんは去って行った。
「な、なんか、イヤな予感が……」
「気にするなって、続けるぞ!」
「ほほほ。雪合戦かえ?」
「ふん。下らん」
弥九郎さんが去った直後に石田殿と刑部さんがやって来た。
「石田殿、刑部さん! 雪合戦します?」
「おお! そうだ!」
「来いよ!」
「なら、僕も」
「佐吉は?」
「下らんと言っている」
「相変わらずだな!」
「⁉」
石田殿は左衛門さんが投げた雪玉を避けた。
「ほら、来いよ! 昔みたいに」
「この程度で参加するか」
石田殿が去ろうとした、その時、
「ふにゃん‼」
「あ、悪い! エリンギ!」
「ふー‼」
オレの投げた雪玉がエリンギに当たった。
「……」
石田殿も早足で去ったかと思うと、戻って来て、
「……」
「って⁉ おい⁉ 佐吉、それ⁉」
石田殿の腕には大量の火縄銃が‼ そして、その目標は!
「オレぇえええ⁉」
石田殿は遠慮なく撃ってきた。
「うわああああ!」
「お、おい! 猫」
とにかく逃げるしかない! と、思っていると、今度は弥九郎さんと数人の人たちが来て、
「こ! 小西殿‼ それは‼」
オレの見間違いじゃなかったら目の前には大砲が見える。
「持ってきたで……フランキ砲や!」
「「「「ええ~~‼」」」」
「そっちが、その気なら……清正ぁ!」
「本気か⁉」
大砲は放たれ、ここにいた人たちは全員、逃げる事に必死だった。
「ねえ? これなに?」
「何故、国崩しを使っているのじゃ?」
「どうやら、雪合戦の様ね」