猫の独り言(その5)
「ふにゃ~」
宴会は終わったな。
うんうん。たくさん飲んだぞ! さて、一服。
「ふう~。うまい!」
さて、俺がニャンコワークを使って聞いた情報での話だが、
『おおっ! みいちゃんじゃないか!』
みいちゃん、二歳の金目銀目の三毛猫だ。
『えんりけ、どうしたの?』
『みいちゃん、かくかくしかじかで——』
『あら、夜の集会で見たわよ。確か、覆面はしていたけど、目を見ると、呉服屋の庄吉さんね。あの人が人夫の権兵衛さんを後ろから斬ったの見たもの』
『そうなのか⁉』
『そうよ。この目で見たもの!』
みいちゃんは、俺に近寄って答えた。
『わかった。それで、俺との——』
『じゃあね』
急いでみいちゃんは俺から逃げた。
『あ、そんな!』
次に野良猫のマドンナ、白猫の姫ちゃんに会った。
『なに? えんりけ?』
『姫ちゃん。実は——』
『辻斬り⁉ そんな話しないで‼』
姫ちゃんは毛を逆立てて震えた。
『どうしたんだ⁉ 姫ちゃん』
『夜のお散歩していたら居たのよ! 逃げられない様に片足を斬って、それから拷問のごとくめった切りやめった刺しにして、怖くて腰が抜けたわ!』
『その、話せる範囲でいい! 犯人の顔とかは?』
怯える姫ちゃんを慰めると、姫ちゃんは答えた。
『浪人の伸介よ! あいつ、言ってたわ! 今、辻斬りが流行っているから真似事をしているって!』
『そうか、わかった。ごめんね。怖い事、思い出させて、お詫びに——』
『ふん』
俺がナンパしようとすると、姫ちゃんは冷たく向こうに行った。
『ああ! そんな‼』
更に調査をして、性格と行動範囲を考え予想して、次に事件が起きる場所にバカ猫達に教えたって事だ。
まさか、浪人の伸介が来るとは、思わなかったがな。
その後、あのボンボンが逃げ出して、
『どうすれば、猫丸を!』
だが、俺は焦らなかった。
俺は知っていたのだ。あの覆面と女男が隠れて見ている事を。
女男は面倒なので、覆面の方に言う事にした。
そして、それをボンボンに言い、呼ぶことに成功した。
まあ、そんな所だ。
ついでに、覆面を犯人と言ってた連中も処分をくらったようだな。
だが、正しい歴史では、数か月捕まらず報告を処分したのと、三月三日に犯人として、大名衆の子息が数人、捕まり処刑された様だがな。
それにしても、バカ猫、少しは強くなって根性がついたじゃないか。
このぐらいなって、もらわないとな。
おっと、煙草も消えかけだ。寝るとしよう。