表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備前宰相の猫  作者: 山田忍
65/153

猫と解決

「くっ!」

 飛ばされた木刀を取りに行こうとするが、

「うわっ!」

 オレが蹴り飛ばされてしまった。

「く、くそっ!」

 ならば素手で、と思ったが、

「ぐあ!」

 辻斬りに腹を蹴られた。

「——ぐ」

「おやおや、弱いね」

「な、なんの!」

 痛みを堪えて攻撃しようとするが、

「ぐああああ‼」

 フルボッコになってしまう。

「く、くそ……」

「うぬは負けを認めないのか」

「み、認めるもんか! ここで逃げたら、お前は好き勝手し続けるだろ!」

「まあね。うぬ程度なら、すぐに片づける事が出来るからさ」

「うえっ!」

 もう一度、腹を蹴られたが、今度は色々なところを蹴ってくる。

「げほ! ——はあはあ……」

「さすがに、大人しくなったかな。じゃあ、もっと……」

「うあ……」

 刀で体中を叩きつけてくる。

「く……」

「それそれぇ!」

「はあ……はあ……」

 オレは倒れてしまった。

「はっはっはぁ‼ 弱い者をいじめるのは楽しいなあ」

 前、賊に勝ったが、こいつはそれ以上だ。

 オレは弱いから倒れてしまった。……倒れてしまった。が、

「くっ……」

「何するんだ‼ 放せ‼」

 足を押さえつけて、逃げないようにする。

「放せ! 放せ、ってんだよ‼」

 蹴りと打撃で体は痛いが、ここで逃げると、また犠牲者が増えてしまうかもしれない。

「い、や、だ……放さない…………」

「放せ‼ 放せ‼」

 更に強く蹴られ、苦しくなってくる。

「く……」

「そっか。なら——死ね‼」

「‼」

 刀がオレの首に向かってくる。もうダメかと思うと、

「!」

 辻斬りの刀が止まった。なぜ、止まったのか見ると、

「ぎ、刑部さん……」

「ほほほ。大事はないか? 子猫よ?」

 刑部さんが、辻斬りの刀を押さえつけている。

「は、はい……」

「ならばよかろ」

 刑部さんが軽く辻斬りの刀を弾くと、

「猫丸!」

「は、八郎……」

 八郎は倒れていたオレを抱き上げた。

「ふにゃ」

 八郎の肩にはエリンギもいる。

「猫丸! 酷い怪我だ! こんなになるまで……」

「こんなの怪我じゃない……それより、刑部さんは、勝てるのか……?」

 刑部さんを見ると、

「ほほほ、それ」

「う、何だ? 強い力だ……」

「そら。ほれ。とお」

「ぬ……」

 刑部さんは余裕で辻斬りを圧倒している。

「それもそうだ。大谷殿は、賤ヶ岳では加藤殿、福島殿とは別に石田殿と共に大手柄を立て、紀州征伐で敵を槍一突きで倒した腕前の持ち主だ」

「そう、なの……」

「ほほほ」

「く、おらあああ!」

「!」

「刑部さん!」

 刑部さんの顔は斬られた、が、顔を覆っている布が切れただけで済んだ。

「ほお! やるな……だが……」

 刑部さんが、すごい速さで辻斬りの胴を斬った。

「これでよかろ」

「ぐああっ!」

 辻斬りから大量の血が出て、刑部さんの布や着物が血まみれになった。

「ほほほ。弱い弱い」

 辻斬りは倒れ、刑部さんはオレたちの元にやって来たと同時に頭を巻いている布が落ちて素顔が月に照らされて見えた。

「ぎょ、刑部さん……‼」

「どうしたのかね?」

 顔は爛れているが、女性以上に目鼻立ちは美しく、爛れている事は気にもならない。

「おお! 見えたか」

「……刑部さん……なぜ、隠すのです?」

「この様な醜き顔、見せられぬだろ。だから、隠すのさ」

「醜きって……醜くないですよ……刑部さん……興味本位で……顔……見ようとして……すいません……」

「今、その程度の事、どうでもよかろ」

「それより、猫丸。お主は怪我人だ。それ以上喋るな」

 そういえば、全身が傷だらけで痛くて、今にも意識を失いそうだ。

「あ……そうだ、な……」

「子猫、かなり酷い目に遭ったねえ」

「こんなの、ヒドい目じゃ……ありませんよ……でも、なんで、刑部さん……?」

「私は助けを探した。探しているとエリンギが大きな声で鳴くので、その方向を見たら大谷殿がいたのだ」

「夜の散歩をしていたら、たまたま会っただけよ」

「悪いな……エリンギ……」

「ふにゃ!」

 エリンギは嬉しそうだ。

「八郎……エリンギ……ありがと……刑部さんを呼んでくれて……」

「ふにゃ、にゃあ」

「猫丸、違うぞ」

「えっ?」

「子猫。それは、そなたが辻斬りを押さえつけたおかげで、僕は捕まえる事が出来たぞよ」

「刑部さん……」

「猫丸、これで辻斬りは終わった。一件落着だ」

「そっか……これで……辻斬り…………」

「猫丸!」「子猫!」「ふにゃ!」

 意識がなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ