猫と戦い
「はあ!」
「ふん!」
相手の力を感じるが、ここで負けたら終わりだ。
「とお!」
「くっ!」
押された。が、まだだ!
「たあ!」
相手を叩こうとすると、刀でガードした。
「く……」
「ぐ……」
オレは相手と鍔迫り合いになった。
「うう……」
押されそうになった。
「ここで……」
今まで武芸の練習をしたんだ。
こんなところで負けたら……。
「負けて……」
負けたら……。
「負けてたまるかああああ‼」
今までしてきた事が無駄になってしまう!
相手の刀を吹き飛ばすと、武器を拾わずに、
「うわっ!」
隠し持っていた武器を投げて攻撃をしたが避け、木に刺さった。
木に刺さった武器は、とがった鉛筆みたいな形だ。
「なに、鉛筆投げてんだよ‼」
「鉛筆ではない。棒手裏剣だ。気をつけた方がいいぞ、毒などを塗っている可能性もある」
「マジかよ!」
これはヤバいと思った。けど、ここで負けたらオレは死ぬし、小早川殿もどうなるか、わからない。
もし、死んだら教えてくれた左衛門さんや虎之助さんに報いる事が出来ない。
それに、八郎を守るための武芸なのに、こんなヤツ一人も倒せないのでは情けない。
だから、絶対に負けない!
「はあああああああ‼」
相手は攻撃してきたが避けて、オレは相手の腕を殴りつけ、投げようとした棒手裏剣を落とさせて、拾おうとした隙に殴った。
「ぐああ!」
殴られた相手は気絶して動かなくなった。
「や、やった! やったのか⁉」
「よくやったな。猫丸」
「ああ! やったよ!」
やったと喜んでいると、小早川殿は表情を変えて、
「いや、まだだ」
「え?」
周りを見ると、ぞろぞろと人が出て来た。
「おいおい……マジかよ」
一人二人だけじゃなく、五人と敵が増えた。
「う、うっそお~~」
「思っているよりも多いな」
こうなったら仕方ない。
「と、とにかく、オレが倒します。小早川殿は守ります!」
「ほう」
「でえええい!」
オレは大勢の敵に向かった。
「たあ!」
その内の一人と対峙したが、
「きえええ!」
その一方で他の敵が数人がかりで襲ってくる。
「くそぉ!」
もうダメかと思った。その時、
「ぎゃああああああ!」
「ぐあああああああ!」
敵が血を噴き倒れた。斬った人物を見ると、
「虎之助さん。左衛門さん!」
槍を持った虎之助さんと左衛門さんが立っていた。
「やるじゃねぇか。猫」
「これだけの連中を相手に戦うのは、今の汝では厳しいわな」
「猫丸! 大事は無いか⁉」
大きな声が聞こえたので、見ると槍を持った八郎が来ていた。
「八郎! 来たのか⁉」
「まあ、この二人と宇喜多殿くらいは呼んだよ」
「小一郎のおっちゃん⁉ 来たの⁉」
いつの間にか小一郎のおっちゃんも来ていた。
「ああ、君が襲われているって聞いたから」
「小一郎のおっちゃん……。虎之助さん、左衛門さん、オレも行きます! 八郎はどうする?」
「私も行く。これ以上、足手まといは嫌なのだ」
「ああ、待ってくれないか」
「……小早川殿、どうしたの?」
小早川殿は、オレが倒した敵の素顔を見ながら、
「この者達は、毛利家と吉川家と小早川家の者だ。出来る事なら殺さないでもらいたいのだが」
「成程。皆、出来るかい?」
「はあ⁉ だが、わかった!」
「任せな!」
こうして、五人以上の敵は瞬く間に倒してしまった。
「終わったな。猫丸」
「ちょろいもんだぜ」
「あっという間だな」
「すまない。皆の者」
「……で、小早川殿、この者達は毛利家と吉川家と小早川家の者と言っていたけど、どういう事なんだい?」
小一郎のおっちゃんが聞くが、どこか声に険しさがある。
「——実は、私が殿下様と謁見する事を反対している者達がいて、この者達、全員がそうなのだ」
「「はあ⁉」」
「本当の所、兄もこの件は反対していたのでございます。ですが、この者達は自らの意志でこの様な行動を犯したと思います」
「……これから、この者達の処遇はどうするの? 私達で片付けようか?」
「いえ、殿下様の許可が下りるのならば、私の方で解決したいのですが……」
「兄上に聞いてみるよ。どうなるかは、わからないけど」
「そうですか。それは忝い」
小一郎のおっちゃんはオレを見て、
「それにしても、猫丸。よくやったね」
「えっ⁉」
「ああ、すげぇな! 一人倒したとは」
「これも俺の鍛錬の成果だな」
「俺の、だろ」
「どっちでもいいんじゃないか?」
二人は言い合っているが、八郎は嬉しそうに笑った。
「猫丸、強くなったな」
「みんな……ああ‼」
「よし! 今夜は祝杯だ‼」
「おお!」
「えっ⁉ えっ⁉」
「猫丸、皆、お主が強くなった事を喜んでいるのだ。お主は行って来い。私は小早川殿の——」
「しなくてもいい。宇喜多殿も宴に参加すればよい」
「ですが、小早川殿……」
「私は羽柴殿と一緒に行き、この者達の処遇について、殿下様に掛け合おうと思う」
「この事は、私から兄上に報告しておくよ。だから、行っておいで」
「そうですか。では」
「よし、宴だぁ‼」