猫と髪型
ある日のこと、
「猫丸が見せたまんがと言う物で、宇宙がわかった」
「ああ、ならいいや」
「宇宙に行く話を色々見たからだ。猫丸、お主がいれば、私は様々な事柄を覚えていくだろう。感謝する」
「そんな改まって言う事じゃねえよ。ただのマンガだし」
「お主には、ただの、だが、私にはとても興味深い事だ。——それにしても、火星と言う所には、人の姿をしたごきかぶりがいるのか。恐ろしいものだな」
「いやいや」
「あと、お主が見せたまんがに蛸の姿をした師範がいたな。あれがいたら役に立つのだが」
「なんの?」
「兵糧として、だ。あれだけ大きく、すぐに足が生えるのなら、兵糧として申し分ない。焼き蛸にしたら美味だろうな」
「は、八郎! それはやめろ! やめるんだ‼」
「そうなのか。それは残念だ」
「残念って……とにかく、やめろ」
「では、やめよう。他に何か面白い物はないか?」
「音楽聞くか?」
「聞きたい! お主の国の曲は不思議な物ばかりだ。聞かせてくれ! 猫丸!」
「じゃあ……」
八郎に、あの携帯電話のCMソングを聴かせる事にした。嬉しそうに聴いている。
「猫丸、この歌は誰が歌っているのだ?」
「この曲は浦島太郎が歌っているんだ」
「う、浦島太郎が⁉ 本当か⁉ 猫丸⁉」
「あ、ああ‼ ほら!」
動画を見せると、八郎は驚いて質問を続けた。
「猫丸! 浦島太郎だ! これが、そうなのか⁉」
「ま、まあCMでは、だけど……実際は——」
「猫丸! これを止める事は出来ないのか⁉」
「ま、まあ出来るけど」
「ならば止めてくれ。今から絵を描く!」
「ええっ⁉ 絵をぉ⁉」
「当然だ。本物の浦島太郎を絵にして残そうと思う。これからの者達に姿形を伝えるのだ」
「いや、残さなくても……って書いてる‼」
「ついでに、その歌も書き記しておこうと思う。猫丸、教えてくれないか?」
嬉しそうなので、教える事にした。そして、
「出来た!」
八郎が描いた絵は確かに浦島太郎だ。特徴を捉えている。CMの浦島太郎そのものだ。
「次いでに、あの蛸の師範の絵を描こう」
すぐ書き終わった。マンガの絵そっくりに描いた。
「八郎、絵描けるんだな」
「それなりに、絵師には敵わないが」
「だけど、十分上手いぞ!」
「そうか、そう言われると嬉しいな。ああ、そういえば、今日はお豪の所に行こうと考えているのだが……猫丸、どうする?」
「い——」「ふにゃあ(行く)‼」
エリンギの方が速い。それもそうだよな。お豪ちゃんの所って言ったし。
「えりんぎは行くのか。では、猫丸は?」
「もちろん、行くよ」
「では、行こうか」
オレたちは大坂城に行く事にした。
大坂城奥御殿に着くと、
「あら! お兄様、猫様! えり! お豪の所に来てくれたの?」
「ああ、そうだ」
「こんにちは! お豪ちゃん!」
「ふにゃあん(よっ)!」
「お菓子も用意しました! みんなでお話しましょう!」
「猫丸、お豪にみせられそうな、まんがはあるか?」
「まんが? まんがって何でする?」
「見せた方が早いよね。えっと、じゃあ」
招き猫の姿をした妖のマンガを見せて、声マネをして朗読をすれば、二人は真剣になって読んでいる。
読み終わると、
「猫様! 何て素敵なお話ですの! 猫様の国には、この様な話があるのですね!」
「本当に猫丸の国はすごいな! 行ってみたいものだ!」
「他にもいっぱいあるよ。他にも——」
お豪ちゃんに見せられそうなマンガを見せて読んであげると、二人とも興味津々で見ている。そんな姿を見ていると、何だか嬉しくなった。
「もうこんな時間か。猫丸、帰らないと」
「そうだな。お豪ちゃん」
「猫様、どうしたの?」
「はい、これ!」
お豪ちゃんに原宿系ストリートファッション誌をあげる事にした。これも姉ちゃんが貸していた物だが、この時代で持っていても仕方がないのであげる事にした。
「まあ、ありがとうございまする! この女の子可愛い!」
「お豪、良かったな」
「はい!」
お豪ちゃんの喜ぶ顔が見れて嬉しくなった。
が、翌日あんな事になるなんて、
「猫を打ち首にするのじゃ‼」
「えっ! なんで⁉ なにか悪い事したの?」
「ち、父上! 何故、猫丸を打ち首に⁉」
朝早くに大坂城に拉致られ、いきなり打ち首って事になった。
なんで?
上様、すげー怖いし、なぜ、そうなったのかの理由もわからないし、すると上様の奥様が、
「子猫の書を見て、五もじが尼削ぎをすると、言いだして聞かないのよ!」
「へっ? 尼削ぎ?」「あ、尼削ぎ‼」
「そう、五もじが髪を切ろうとしているの」
「ととさま! かかさま!」
「五もじ、やめるのじゃ! まだ嫁にも行ってないのに」
「ととさま、かかさま! これが猫様の国の姫君でする!」
お豪ちゃんの手には、原宿系の人気モデルをしているアーティストの女の子の特集のページを見せている。
「猫様の国の姫君は短い髪の者ばかりです! お豪も短い髪にして猫様の国の姫君みたいになりたいのでする!」
「でも、髪の毛ぐらい——」
「猫丸、女が髪を切るのは基本的には鬢そぎか、尼になる時ぐらいだ。それ以外では基本は髪を伸ばして結っている」
「五もじ~! 猫! どうするのじゃ!」
「どうするって……」
エリンギを見ると嬉しそうだ。八郎は心配している。——そうだ!
「お豪ちゃん。短い髪だけが、お姫様じゃないよ。ちょっと待って、あのリ……紐とかあります? あと、鏡も!」
「紐? 紐と鏡ならあるが?」
侍女から鮮やかな紐を貰うと、お豪ちゃんの髪を高めのツインテールにして鏡を見せた。
「お豪ちゃん。鏡見て」
「おおっ‼」
「まあ! 可愛い!」
「お豪ちゃんの髪はオレが見ても、すごい綺麗な髪なんだ。だから髪を切るなんて、もったいないよ」
「猫様! ありがとうございまする!」
お豪ちゃんは抱き着いた。
「わわっ! 落ち着いて」
「お豪、より愛らしくなったな」
「ああ」




